3 循環器系のおはなし(9)
「小腸で吸収した栄養を
すぐに肝臓に届けたいから、門脈系」でしたね。
今回は、肝臓がおかしくなってしまったときの
門脈系についておはなしします。
門脈を流れる血液は、勢いが強くありません。
後は大静脈に戻るだけの「静脈系」です。
本来通れるはずのところが詰まってきたとき、
動脈系なら「勢いで行っちゃえー!」ができます。
静脈系ではそんな血液の勢いはありません。
「通りにくいなら迂回しよう…」と
迂回ルートに流れていくことになります。
肝臓の働き(調子)が悪くなってきたとき、
門脈系の迂回ルートには
「食道静脈」「腹壁静脈」「直腸静脈」があります。
これらの迂回ルートはあくまで脇道。
あまりに流れてくる血液が多く、
長時間にわたると大変なことになってきます。
例えば腹壁静脈。
ここにたくさんの静脈血が流れることで、
お腹の皮膚の下に青黒い蛇がのたうっているような
血管が透けて見えてきます。
これが「メドゥーサの頭」。
腹壁静脈の怒張(膨れてくること:どちょう)と説明されますね。
腹壁静脈に多くの血液が流れているせいで、
ギリシャ神話の髪が蛇にされた女性
メドゥーサのように見える…ということです。
これがお腹に見えたら、肝臓の調子が悪い証拠です。
同様に、残り2つの静脈でも瘤
(血管がこぶのように膨れること:りゅう)ができ、
破裂してしまう危険性が高まっています。
門脈系の必要性と、
肝臓がおかしくなったときのことをおはなししました。
門脈系では静脈の名前がたくさん出てきましたが、
実は、静脈が単独で出てくるのはとてもレアケースです。
動脈と静脈は並行していることが多く、
普通は細胞に酸素を届ける動脈のほうに注目するからですね。
血管系は、聞かれるところがかなりしぼられます。
だから最低限「太いところ」と
「大事な場所に行っているところ」は
理解してしまいましょう。
そうすれば、
なぜその血管ばかり質問されるのかが分かってきますよ。
「太いところ」の代表は大動脈ですね。
でも「大動脈」って言われて、
左心室を出てから骨盤に入って
2つに分かれるまで…を指していたら、守備範囲広すぎです。
仮に「大動脈に瘤ができた!手術だ!」ということになっても、
そもそもどこを切って開けていいかが分かりません。
だから、大まかに2つに分けました。
横隔膜より上の胸部大動脈と、
横隔膜から下の腹部大動脈です。
これで一段落…と思いきや、
これだけでは頭と腕に血液が行きません。
だから「腕頭動脈」が必要になってきます。
…まだ、腹部臓器に血液が届いていませんね。
少し長くなりますので、
ここから先は次回におはなししますよ。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220831更新)