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6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(12)

(2)食道

食道に食べ物がついたときも、考えていく順番は同じです。

「食べ物がうまく胃に届かない!」というときには、

まず物理的原因から考えてみましょう。

奇形、炎症、狭窄・圧迫…

これらがあったらうまく届きませんね。

 

その次は筋肉と神経原因。

筋肉の一時的な問題として、

食道けいれんが起こることもありますね。

口腔同様の筋肉原因も、もちろんありえます。

神経系に糖尿病性・アルコール性の神経障害、

心因性問題も含まれてきます。

 

神経系問題に

「食道アカラシア」を追加しておきましょう。

これは食道の蠕動をコントロールする

「アウエルバッハ神経叢」が変になって起こる、

「下部」食道括約筋が広がらなくなった食べ物の通過障害です。

上は広がったまま、下がぎゅうぎゅうで通れない…ですね。

嘔吐・胸やけ・胸痛・嚥下障害が起こります。

原因はよくわかっておらず、患者さんは10万人に1人くらいの、

比較的まれな病気ではあります。

でも「固形物より流動食が飲み込みにくい

(一般的には逆)」ことと、

おかしくなる神経の役目の重大性から、

意外と問われやすい病気です。

「アウエルバッハ神経叢の名前と働き」、

「一般的な飲み込みやすさと逆!」という

2点を意識してくださいね。

 

物理的問題圧迫の例として、

食道静脈瘤と食道がんについておはなしします。

 

食道静脈瘤が

「どこのどんな血管で、何が起こっているのか」は名前通り。

原因は、肝不全です。

あとで肝臓のところでおはなししますので、ここでは簡単に。

肝臓には、

小腸で栄養を吸収した後の静脈血が最初に運び込まれます。

ところが肝臓の働きが悪くなってしまうと、

肝臓を血液が通りにくくなってしまいます。

そこで本来肝臓に向かうはずだった血液が、

迂回ルートの食道静脈、腹壁静脈、直腸静脈へと向かいます。

これが長く続いてしまうと…

本来のルートではないところに

たくさんの血液が流れ続けた結果、

静脈に瘤ができてしまいます。

具体的には、

食道と上大静脈をつなぐ「奇静脈」あたりがピンチです。

破裂してしまうと、吐血です。

そんなことを避けるためには、

熱いものや香辛料、お酒を避けてください。

 

食道がん自体も、癌の中でそこまで多くありません。

口腔・咽頭がん同様、全体の約3%ほどです。

これまた飲酒とタバコの関連性が高く、

男性に多く(4倍)なっています。

始まりは「飲み込みにくい」、「つかえる」、

「しみるような胸やけ」。

やがて「声のかすれ」や「胸の奥や背中の痛み」に変わって、

それでも放置すると食事困難になってきます。

こうなると手術や化学療法の対象ですね。