5 脳神経系と内分泌系のおはなし(12)
ノルアドレナリンが受け止め方で伝わる情報が違う例なら、
今回は「違うものがはまっても同じ情報が伝わる」例です。
交感神経系でも副交感神経系でも使われるアセチルコリン。
この受容体にもいろいろな種類があります。
例えば「ムスカリン性アセチルコリン受容体」。
単に「ムスカリン受容体」とだけ書いてあることもあります。
このムスカリン性アセチルコリン受容体は、
ムスカリンを受け止めても、
アセチルコリンを受け止めても同じ情報を伝えます。
この受容体は心臓と腸にあり、副交感神経系のはたらきを伝えます。
だから心臓はゆっくり動き、
腸(の平滑筋)は元気に活動して消化吸収が進むのです。
同様にニコチンも受け止めるのが
「ニコチン性アセチルコリン受容体」。
これまた「ニコチン受容体」とだけ書いてあることもあります。
ニコチンを受け止めても、アセチルコリンを受け止めても
同じ情報を伝えるのですが…。
こちらの受容体は、
交感神経系でも副交感神経系でも使われているので、
ちょっぴり複雑になります。
なお、ニコチンはタバコに含まれる成分の1つです。
タバコを吸っている人は
「すっきりする」や「リラックスできる」といいますよね。
これ、ニコチンがニコチン性アセチルコリン受容体にはまって、
交感神経系優位状態(覚醒状態→頭がすっきりする)と、
副交感神経系優位状態(休息状態→リラックス)の
どちらも生じているせいです。
もちろん、アセチルコリンが正常に出ていれば
「頭すっきり」も「リラックス」もコントロールできますよ。
タバコのニコチンのお世話になる必要は、どこにもありません。
先程のムスカリン性アセチルコリン受容体についてもう少し。
受容体は受け止めるところですが、
そこに栓をされてしまうと情報が伝わらなくなります。
例えば、アトロピンというお薬。
迷走神経が働きすぎているために起こった
徐脈(脈がゆっくりになること)や、
腸蠕動亢進しすぎて痙攣…なんてときに使われるお薬です。
迷走神経は副交感神経系の中で
内臓(腹部器官ほぼ全体)を担当していました。
そんな迷走神経が暴走しているなら、
副交感神経系の受容体をブロック(栓)してあげれば…
悪い状態は治まるはずです。
あと、散瞳用目薬としてもアトロピンは使われます。
副交感神経系が働きすぎると
縮瞳(目の瞳孔が狭まること)するので、
そこをブロック(栓)して、
適度な光が網膜まで届くようにするのです。
散瞳効果を利用して弱視治療の一環にも使われますが、
さすがにそれは疾病論等で勉強してくださいね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220923更新)