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12 各論7:呼吸(中枢・精神):③麻酔薬(4)

2023年10月29日

術前薬の例として、

アトロピン硫酸塩(アトロピン)を紹介しますね。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051139

消化液の分泌を抑制する抗コリン薬です。

副交感神経性の反射を少し抑えて、

気管内挿管をするときに出すぎて詰まると困ってしまう

気道内分泌物を抑えるためです。

目の瞳孔を開かせる(散瞳させる)お薬でもありますね。

輪郭がぼやけて見えるようになりますので、

効果が消えるまでは車の運転等はできませんよ。

術前薬として使ったときには心配無用(その後は手術)ですが、

目の検査のために使ったときには要注意です。

 

禁忌は本剤にアレルギーのある人。

緑内障の人、麻痺性イレウスのある人、

前立腺肥大で排尿障害のある人も禁忌です。

「抗コリン作用」で悪化してしまうところばかりです。

慎重投与対象は

徐脈や心室頻拍・心室細動の起こる可能性のある重い心疾患の人。

抗コリン作用のせいで発汗が抑制されてしまうので、

高温環境下や甲状腺機能亢進症の人にも慎重に。

同じく抗コリン作用によって悪化する前立腺肥大の人や、

中毒性巨大結腸のおそれのある潰瘍性大腸炎の人も

アトロピン硫酸塩を使うときには慎重な対応が要求されます。

 

併用注意は、

抗コリン作用を強めるもの(他の抗コリン作用薬やMAO阻害薬)。

ジギタリスの効果が強く出ますので、

ジギタリス併用時はジギタリス中毒に要注意です。

あと、有機リン剤中毒解毒薬の

プラリドキシムヨウ化メチルと併用すると

アトロピン硫酸塩の効果が出るまでに時間がかかるようになります。

「有機リン」は、農薬(除草薬)の主成分ですね。

 

続いて、筋弛緩薬のおはなしに入ります。

一例として、

スキサメトニウム塩化物水和物(スキサメトニウム)のご紹介。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00068042

こちらは筋細胞のアセチルコリン受容体に働いて、

ナトリウムチャネルの反応を変化させることで筋肉収縮を抑える薬。

手術前(の気管内挿管時)、骨折・脱臼の整復時、

精神科での電撃療法時や腹部腫瘤の診断にも使われます。

 

腹部に炎症(虫垂炎等)があると、

軽く手のひらで押すと腹壁が緊張し(筋性防御)、

徐々に手のひらで圧迫してから急に手を離すと

はっきりとした痛みを感じるブルンベルグ徴候が出ましたね。

そのときに使われるのがスキサメトニウム塩化物水和物です。

 

次回は禁忌から確認していきましょう。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20231029更新)