4 髪(2)シャンプー・リンス・コンデショナー
髪でも、汚れを落とすための
「セッケン」で問題がありますね。
皮膚と清潔のところでおはなしした、
pHとタンパク質変性のところです。
ここでも出発点をまず確認しましょう。
水に溶ける汚れや、
髪にまぎれただけの小さな粒(花粉や砂粒等)なら、
「水で流す」だけできれいになります。
「水で流す」だけではきれいにならない、
油に溶ける汚れを落とすためには
セッケンが必要になってきます。
「油に溶ける汚れ」として、
頭皮から出た油(皮脂)が含まれるのはもちろんですが。
髪につける整髪料(ムース、クリーム、ミスト等)も
1日たてば「油に溶ける汚れ」です。
これらは何らかの油分と、
髪型を維持するための線維
(ファイバー、合成樹脂等)を混ぜたもの。
油自体が空気中の酸素と手をつないで
変化(酸化)してしまうこと、
油分にホコリ等が付いてしまうこと、分かりますね。
セッケン(髪に使うときには「シャンプー」)の
基本スタイルは、水に溶けるとアルカリ性。
そのままではタンパク質が変性してしまうので、
酸性を加えて中性近くにしてしまおう…
これがリンス本来の役目です。
シャンプーとリンスの関係を応用したものが
パーマ(パーマネントウェーブ)。
パーマには1液と2液があって、
1液はアルカリ性、2液が酸性です。
アルカリ性の1液で髪のタンパク質の性質を変えて、
ある程度変わったところで2液を混ぜて
中性付近にもっていく…という流れになります。
1液で早く・確実にタンパク質が変性するように
熱を加えることが多いですね。
これは
「化学反応は熱を加えた等が早く進む」ことに他なりません。
また「髪を染める(染髪)」ときにも、
アルカリ性による変性が使われています。
一般的に「髪を染める」ときには、髪のメラニン色素の脱色と、
望みの色を染めつかせる(染色)が同時に起こります。
髪のメラニン色素は、毛皮質にありましたね。
皮膚の表皮と真皮の境界にいるメラニン色素を
思い出すとイメージしやすいはず。
でも皮膚のメラニン色素の役目は、
真皮より下に必要以上の紫外線が入り込まないようにすること。
髪のメラニン色素の位置とは
全く同じではないことを忘れないでくださいね。
あとは「染髪」の文字を見たら…パッチテストが必要な
パラフェニレンジアミンも思い出してください。
過敏症のところでおはなししてありますからね!
毛皮質のメラニン色素を脱色するためには、
毛小皮のうろこガードを抜けないといけません。
毛小皮(キューティクル)は、
アルカリ性だと立ち上がる(隙間ができる)ようになっています。
だからまずメラニン色素の色を抜くために、
脱色剤と一緒にアルカリ性の薬を使うことになりますね。
(同時に好みの色を染み込ませる「染色」もしますよ)
…と、いうことは。
髪がアルカリ性になっているときに摩擦を加えると、
毛小皮がはがれやすくなってしまいます。
「シャンプーのときにゴシゴシ洗うと髪が傷む」
というのはこのせいです。
シャンプーと髪を反応させる
(脂肪酸ナトリウム塩にミセルを作ってもらう)
必要はありますが、そこに物理的な力は必要ありませんよ。