10 核酸・遺伝子のおはなし(13)

今まで紹介できなかった、この分野のおはなしの補足です。

抗生物質はなぜ細菌に効くのか、というおはなし。

 

抗生物質は、細菌を殺す・増えられないようにするお薬のこと。

おそらく、病院にかかると1回は出されたことがあるはずです。

親知らずを抜く「抜歯」でも、歯医者さんで処方されますね。

「5 タンパク質」でおはなししたように、

薬は酵素の「何か」を邪魔するものが大部分です。

ではこのお薬は何を邪魔しているのかというと。

抗生物質は、細菌のリボソーム内酵素を邪魔しています。

リボソーム…タンパク質合成工場でしたね。

タンパク質ができないと、酵素ができない。

酵素ができないから、細菌は生きていけない…というわけです。

 

あれ?

ヒトの細胞、どうして大丈夫なの?

 

そこが心配になりますよね。

でも、ご安心ください。

ヒトのリボソームと細菌のリボソームは、ちょっとサイズが違います。

サイズが違うということは、

「細菌用の薬でヒトのリボソームは邪魔されない」ということです。

もちろん、すべての抗生物質が

「細菌用リボソームに特化した邪魔」をするわけではありません。

ヒトリボソームにも悪影響を及ぼすものもあります。

とはいえ、ヒトに悪影響(副作用)が大きいものは、どうしても使いにくいもの。

だから一般的には「細菌用リボソームだけを邪魔する」薬が、抗生物質です。

 

なお、ウイルスには抗生物質のような「これ!」というものはありません。

比較的ウイルスに共通するところを邪魔する「抗ウイルス薬」はありますが、

そんなにピンポイントに効果が出るものではありません。

邪魔しようとしたところの構造がすぐ変わってしまうからです。

「RNAはすぐに変わっちゃう!お直しがない!」

遺伝子治療・遺伝子組み換え食品で出てきたことが、ここに関係してくるのです。

また、ヒトの細胞を利用して増えるから、というのも理由ですね。

ウイルスには設計図にDNAを使うもの(DNAウイルス)と

RNAを使うもの(RNAウイルス)があります。

どちらも細菌のように自分専用のリボソームなんか持っていません。

入り込んだ(感染した)細胞のリボソームを使って、自分(ウイルス)を増やすからです。

だからウイルスは自分の設計図と、

「他の細胞を使うときに必要な道具」だけ持っていればいいことになります。

例えば、遺伝子治療・遺伝子組み換え食品のところで出てきた「逆転写酵素」ですね。

だから、抗生物質のようにウイルスを狙い撃ちすることは難しいのです。

 

以上、抗生物質についてのおはなしでした。

リボソームの働きと酵素についての復習ができましたね。

細菌とウイルスについては、微生物学等で勉強できるはずです。

ちゃんとDNAとRNAの違いを意識しながら、

微生物学等の理解もどんどん深めてくださいね。