8 脂質代謝のおはなし(1)
脂質代謝のおはなしに入りましょう。
代謝には2つありましたよね。
ヒト・臓器レベルの広い意味での代謝と、
細胞レベルの狭い意味での代謝です。
ここでは先に
広い意味の代謝についておはなししますね。
皆さんご存知の通り、脂質にもいろいろな種類があるので、
ここでは中性脂肪
(TG:トリアシルグリセロール・トリグリセリド)を
例にとっておはなししますよ。
まず、私たちの口の中に入った脂質は
歯で物理的に細かくなり、
胃を通過して、十二指腸に到着します。
そこでは膵臓から出るリパーゼが待っています。
リパーゼは脂質の消化酵素。
中性脂肪のベルトハンガーからベルトを外す、
あのリパーゼです。
リパーゼによって中性脂肪が
グリセロールと脂肪酸に分かれるのですが…。
そのままでは、またもとの形に戻ってしまいます。
消化管の中は水分がたくさん。
水嫌いの脂質たちは
「水嫌いどうしで固まっていようねー」と
集まった結果…せっかくリパーゼが分解したのに、
また大きな塊になってしまいます。
これでは、
小腸に届いても大きすぎて吸収できません。
ここで胆汁酸の出番です。
胆汁酸…この名前はステロイドのおはなしで出てきましたね。
誘導脂質の1つで、
ステロイド核を持っている仲間でした。
この胆汁酸には水好きパートと水嫌いパートがあり…
「ミセル」を作ることができるのです。
胆汁酸さえあれば、
リパーゼがベルトハンガーから外したハンガー(脂肪酸)が、
脂質どうしで集まる前にミセルの中に入れておけます。
これなら、小腸で吸収できるサイズを維持できるのです。
そしてグリセロールも小腸から吸収されて、
「無事に脂質を吸収できた!」ということになります。
でも、脂質の吸収にはまだ続きがあります。
小腸(上皮細胞)に吸収された後、
どうやって合成・分解工場の肝臓まで運びましょうか。
そこで出てくるのがリポタンパク球の1番大きなもの、
キロミクロンです。
キロミクロンの中に吸収した後の
脂肪酸やグリセロールを入れておけば、
少なくとも運ばれる途中で
塊になってしまうことはありません。
でも、狭い血管を通ろうとしたのでは、
今度はキロミクロン自体が詰まってしまます。
それも困るので、キロミクロンには
血管より太いリンパ管を通ってもらいましょう。
これで、
安心して肝臓に脂質を運んでいくことができます。
吸収された脂肪酸が
すべてリンパ管に入るかというと…そうではなく。
血管に入る脂肪酸もあります。
炭素12個未満の脂肪酸は、
他の糖質・タンパク質同様
血管経由で肝臓に向かいます。
これは炭素水素鎖が短いから、
まだ水をそこまで嫌がる関係にないせいだ、
と思ってくださいね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220502更新)