2 細胞分裂:自分が自分でいるために(1)
細胞について理解が進んだところで、
細胞分裂の勉強に入りますよ。
単細胞生物にとって、
細胞分裂は自己を残し、増やす手段になります。
多細胞生物にとっても、
細胞分裂は自己を残し、殖やす手段になります。
「自己を残す」が体細胞分裂で、「殖やす」は減数分裂ですね。
少し補足しておきましょう。
私たちの体は、一度完成したら終わりではありません。
すぐに寿命を迎える細胞がいますし、
常に新品に置き換えておきたい細胞もいます。
だから目に見えないところで、日々細胞は分裂し、
生まれ変わっているのです。
交代のサイクルが早い細胞の代表は、
「舌の味蕾」「小腸上皮細胞」「赤血球」。
味蕾は受ける刺激が多くてすぐに傷むから。
小腸上皮細胞は常にフルパワーで栄養を吸収したいから。
赤血球は酸素を運ぶ重労働で傷んでしまうから。
この3か所は、細胞分裂ができないとすぐに悪影響が出てきます。
受精卵からヒトができるまでの「発生」段階で、
細胞分裂が必要なことは言うまでもありませんね。
また、生殖(自己の種を残すこと)は、生物にとって最重要事項。
うまく子孫を残すためには、特殊な細胞分裂が必要です。
だから、一度体を完成させた多細胞生物にとっても、
細胞分裂は不可欠なのです。
ここでは、先に細胞分裂に必要な「DNAの複製」をおはなしします。
「細胞分裂」については、その後のおはなしです。
DNAというのは、核の中に入っている設計図のこと。
設計図には、祖先から受け継いだ遺伝情報が書いてあります。
でも、核の中をぐぐっと拡大してみても、
そのままではどんな情報が書いてあるか分かりません。
DNAは核の中で散らばって存在していて、
しかもその情報が暗号で書いてあるからです。
散らばって存在している状態が「染色質」。
酢酸カーミンの赤紫色に染まるから、染色質です。
細胞分裂直前に見えるのは、
染色質がぎゅうぎゅうに集まった「染色体」。
染色体はいびつなX字型(ものによってはV字型)に見えます。
ヒトの染色体は全部で46本。
男女共通の常染色体は1~22番のペアになっていて、計44本。
性染色体は男性でXY、女性でXXとなっています。
染色体のおはなしは、ひとまずここまで。
先にDNAの「暗号」のほうに注目しますよ。
DNAの暗号を知るためには
「セントラルドグマ」を知っておく必要があります。
直訳してしまうと「中央教義」。
「…なにそれぇ?」ですよね。
3つのプロセス(段階)があって、
それを全部まとめて「セントラルドグマ」と呼んでいます。
プロセスの名前は「複製」「転写」「翻訳」です。
次回から、プロセスの中身を見ていきますよ。