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5 水・ミネラル・血液概論:たかが水されど水(4)

細胞膜の初期状態は、

細胞内部がマイナスに傾いた状態でした。

ここに電気刺激が来ると、

ナトリウムチャネルが開きます。

ナトリウムが細胞外に多く含まれる(細胞外濃度が高い)ので、

細胞の外から中へナトリウムイオンが流れ込みます。

細胞内がプラスになるとナトリウムチャネルは閉まり、

カルシウムチャネルが開きます。

カルシウム(Ca²⁺)もプラスの電気を帯びたイオンですが、

細胞内外の差はあまりありません。

一応、細胞の外の方が多い(細胞外濃度が高い)ので

細胞の外から中へカルシウムイオンも流れ込みますが…

ゆるやかな流れ込みなので、

細胞内は一定のプラス度合いを保ったままです。

そうこうしているうちに、

細胞内外のカルシウムイオンの濃度差がなくなってきます。

チャネルは開いているのに、

傾きがなくて滑れない状態です。

カルシウムイオンの流れ込みが止まると、

ずっと開きっぱなしのカリウムチャネルのせいで、

細胞内はまたマイナスに戻ります。

 

…一周して、最初の状態に戻りましたね。

細胞の中が「マイナスからプラス、プラスからマイナス」と変化しました。

これが「細胞が電気を作る」です。

神経細胞の細胞内情報伝達方法で、

運動神経細胞が筋肉に収縮命令をする方法でもあります。

 

だから神経が情報を伝え、筋肉が収縮するためには

「細胞の外にナトリウムイオンが多くて、

細胞の中にカリウムイオンが多い」ことが必要なのです。

細胞外(血液)のカリウムイオン調節をしてくれる

アルドステロンの重要性、しっかり確認できましたね。

 

体内水分量を保つ(ホメオスタシス)ことは大事。

同様に恒常性を守る必要があるのが「pH」です。

pHは酸性度合い・アルカリ性度合いのこと

pH7がどちらでもない中性。

これより数字が小さいと酸性、

数字が大きいとアルカリ性です。

ヒトの血液はpH7.40±0.05(7.35~7.45)ですから、

弱アルカリ性ですね。

このわずかな幅が正常域です。

ここから酸性に外れるとアシドーシス、

アルカリ性に外れるとアルカローシスという異常状態。

あまりに正常域から外れると、ヒトは死んでしまいます。

しかも血液pHは下痢や嘔吐でも動いてしまいます。

そんな「困った…」に対して、

体のpHを守ってくれるのが肺と腎臓です。

 

次回、それぞれのコントロール方法を見ていきますよ。