12 各論7:呼吸(中枢・精神):①制吐薬・鎮咳薬(2)
メトクロプラミドの併用注意は、幾分多いですね。
錐体外路症状を引き起こす可能性があるものが並んでいます。
抗アドレナリン薬のラウオルフィアアルカロイド系、
ドーパミン拮抗薬のブチロフェノン系、
抗精神病薬のフェノチアジン系やベンザミド系薬物のところです。
「錐体路」というのは、大脳が意識して命じる運動命令の通り道でした。
だから「錐体外路(症状)」は、
意図していない体の動き(振戦、筋拘縮、顔部の攣縮)のことですね。
小児では特に錐体外路症状が出やすいので、慎重投与対象。
これらの薬では錐体外路症状だけでなく、内分泌機能異常も起こることがあります。
プロラクチン亢進によって無月経、乳汁分泌、女性型乳房が出るかもしれませんよ。
併用注意の中にジギタリス製剤が入っているのは、
ジギタリス中毒のサイン(悪心・嘔吐)が分かりにくくなってしまうから。
抗コリン剤による消化管抑制作用は、メトクロプラミドの働きと逆方向。
逆方向の薬を同時に飲んでは、どちらの効き目も弱くなってしまいますよ。
鎮痛剤や抗精神病薬として使われるカルバマゼピンと併用すると、
なぜかカルバマゼピンの中毒作用が出やすくなる点にも注意です。
メトクロプラミドの慎重投与対象は小児と高齢者、
腎障害のある人や脱水を伴う身体的疲弊状態にある人です。
腎臓は排泄に関係して、高齢者では腎機能が衰えやすいから。
小児では先程確認した錐体外路症状が出やすくなるからですね。
脱水を伴う身体的疲弊があると、悪性症候群を起こしやすくなります。
悪性症候群は、高熱や頻脈、無動、筋固縮、けいれん、意識障害等が起こるもの。
腎機能低下と関連して起こることが多いですよ。
制吐剤を安全に飲むためにも、水分や栄養の補給が大事になってきます。
補液の重要性も、確認しておいてくださいね。
吐き気の次は咳を止めましょう。
せきを止める薬(鎮咳薬)も、反射の受容器や中枢を邪魔する考え方は同じです。
受容器に働く薬は、日本ではあまり使われていません。
日本で鎮咳薬と言えば、
中枢を邪魔するコデインリン酸塩水和物(リン酸コデイン)が有名です。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051062
コデインリン酸塩水和物の働きは、鎮咳(咳止め)だけでなく
鎮静、鎮痛、激しい下痢を止めるときにも使われます。
この「鎮静・鎮痛(・下痢の改善)」は、
コデインリン酸塩水和物がモルヒネ系鎮痛剤の仲間である証拠。
コデインリン酸塩水和物の添付文書を確認し終わったら、
麻薬(麻薬性鎮痛剤)のおはなしをしますので待っていてくださいね。
次回、コデインリン酸塩水和物の禁忌から確認していきましょう。