9 ヒトを取り巻く環境(3):生態系(4)
生態系のエネルギー移動を具体的にイメージするには、
炭素(C)や窒素(N)に注目するといいですよ。
まずはおなじみのグルコース(糖質)に含まれる
炭素(C)から行きましょう。
大気中にある二酸化炭素(CO₂)が出発点です。
大気中の二酸化炭素は、植物に取り入れられ、
光合成でグルコース(C₆H₁₂O₆)に変わります。
…ちゃんと二酸化炭素にもグルコースにも
炭素(C)が入っていること、確認できましたね。
一度確認できましたから、あとは化学式なしでいきますよ。
植物が作ったグルコースは、
一部は細胞が生きるための呼吸に使われます。
残りは植物に蓄えられます。
細胞壁のセルロースや、貯蔵用のデンプンに変わるものもあります。
形が変わっても、炭素が中にあることは変わりません。
植物が一次消費者に食べられると、
一次消費者にグルコース等が移動していきますね。
食べ物中のグルコースを消化・吸収して、
細胞でATPを作って…というおはなしは、
ヒトを例にしてちゃんと理解できているはずですよ。
これは栄養段階が上がっても同じことですね。
そして最後に植物・動物の枯死体や遺骸、排泄物等を
分解者が無機物へと変えていきます。
つまり、二酸化炭素として炭素が大気中に帰っていくのです。
そして大気中の二酸化炭素は植物に吸収され、
またグルコースになっていくのです。
これが「炭素の循環」。
ちゃんとぐるぐる回っているところ、理解できましたね。
ただし忘れてはいけないこと。
循環せずに一方通行になってしまう炭素の動きがあります。
石油・石炭といった化石燃料の使用(燃焼)です。
石炭や石油自体は
植物や動物(プランクトン)の枯死体等が
長い長い時間を経て変化したものですが、
石炭や石油に(すぐに)炭素が戻っていくことはありません。
使われれば使われるほど、大気中に二酸化炭素が増える一方…。
余りに大気中の二酸化炭素が増えすぎてしまうと、
植物の吸収が追い付けなくなってしまいます。
これ、後で「温室効果」のところで出てきますからね。