9 ヒトを取り巻く環境(3):生態系(5)
炭素(C)の移動は、
グルコースに置き換えればわかりやすかったですね。
窒素(N)の移動では、
分解者(の中でも特定の菌)が主役になりますよ。
まず確認。
大気中には窒素(N₂)がたくさんありますが、
植物や動物はこれを直接使うことはできません。
使えるのは、土壌中のアンモニウムイオン(NH₄+)や
硝酸イオン(NO₃-)です。
植物はこれらのイオンを根から取りこんで、
アミノ酸を作ります。
アミノ酸にはアミノ基(-NH₂)がありましたね。
無機物のアンモニウムイオンや硝酸イオンから
有機物のアミノ酸に窒素のNが移動したことが分かります。
これを「窒素同化」といいます。
アミノ酸はタンパク質の材料で、
いろいろなもののもとになっていることは
(ヒトについてですが)おはなしが終わっていますよ。
「え?植物にも消化酵素?」なんて思ってはいけませんよ。
細胞膜には膜タンパク質が必要でしたし、
ATPを作るときにも酵素による触媒効果が必要でしたよね。
植物が作ったアミノ酸(タンパク質)は、
一次消費者に食べられることで移動していきます。
消化・吸収されて一次消費者に取り込まれ、
二次消費者に食べられて…この辺りは炭素の移動と同じ。
そして植物や動物の枯死体・遺骸、排泄物は分解者が分解。
ここで出来るのはアンモニウムイオンです。
植物はアンモニウムイオンを取り込むことができますが、
本音は「…硝酸イオンのほうがいいな…」です。
そんな硝酸イオンを作るのが、「硝化菌」と呼ばれる一群。
硝化菌はアンモニウムイオンを硝酸イオンに変えます。
植物は大喜びで硝酸イオンを取り入れ…
あとは窒素同化のおはなしにつながりますね。
窒素の流れは、今おはなしした循環だけではありません。
大気中の窒素も巻き込んだ循環もありますよ。
ここでは先程出てきた硝化菌がスタート。
硝化菌の作った硝酸イオンは、
全部が植物の根から吸収されるわけではありません。
一部は脱窒素細菌の働きで、気体の窒素(N₂)に変わります。
この「脱窒素細菌が気体の窒素を作ること」を「脱窒」といいます。
気体になった(大気中の)窒素はそれで終わりかというと…
そんなことはありません。
大気中の窒素をもとにアンモニウムイオンを作る根粒菌がいます。
根粒菌は主にマメ科の植物の根に共生しています。
「根粒菌を根に住ませておけば、
土壌中にアンモニウムイオンや硝酸イオンがなくても
窒素を取り入れることができるから仲良くしておこう…」ですね。
この根粒菌の「大気中窒素をアンモニウムイオンにする働き」を
「窒素固定」と呼びます。
あとは植物が食べられ(もしくは枯れ)ると
分解者のおかげでアンモニウムイオンができ、
さらに硝化菌が硝酸イオンに変えていく…。
これで大気中の窒素も含めた大きな循環が完成です。