9 ヒトを取り巻く環境(3):生態系(6)
最終的に宇宙に行って戻らないエネルギーの流れと、
生態系の中を移動し続ける炭素、窒素の流れを見てきました。
その前には生態系の復元力のおはなしもしましたね。
大体のことはなにかあっても元通りになるはずなのですが…
元に戻らないこともあります。
ここからは栄養段階の最上位にある人間の活動が、
生態系に与える影響を確認していきましょう。
先に言っておきます。
多くは、生態系にとって残念な結果になります。
でも、人間の活動なくしては維持できない生態系もありますからね。
「人間はその活動によって周囲に大きな影響を与えてしまう」という
自覚を持つことが大事ですよ。
人間が生活すると、各種有機物を含んだ生活排水が出ます。
それらは川や海に流れ込み、
分解者による分解や多量の水による希釈を受けます。
一部は下に沈む(沈殿)ものもありますね。
分解者により各種有機物が分解されると
無機物の栄養塩類に変わります。
水生植物や植物プランクトンは栄養塩類を取り入れて
成長しますので、生態系に特段の影響はでてきません。
では、出る生活排水が急増したらどうでしょう。
できる栄養塩類が水中に増えますね。
これが「富栄養化」。
水生植物や植物プランクトンは栄養が増えて増加するのですが…
水の色が目に見えて変わってきます。
これが「赤潮」です。
赤潮は赤から褐色の植物プランクトンが異常に増えた状態。
これが魚介類のえさになって魚介が増えればよかったのですが。
まず、異常増殖したプランクトンに日光が遮られ、
水底で生活していた水生植物がせっかく増えても枯れてしまいます。
次にプランクトンの遺体分解で水中の酸素が使い果たされ、
魚介類が酸素欠乏状態に!
餌があっても食べるどころではありません。
その結果、赤潮が発生するとあまり間を置くことなく
魚介類の大量死滅が起こってしまいます。
これ、生態系の復元力を超えてしまった状態ですね。
ヒトがまばらでバランスの取れていた状態から、
急な都市化で生活排水が増え、
河口近郊の生態系が元に戻らない…という例です。
ここでは分解者の分解ができている前提でおはなしを進めましたが。
分解が追い付かなくとも、生態系の復元力を超える事態は起こります。
沈殿物が多すぎて、分解が追い付かないヘドロがその例ですね。