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9 呼吸器系のおはなし(2)肺(肺胞)と骨の基本(3)

塵肺症の肺胞線維化が進むと、

膨らめていた肺胞が膨らめなくなります。

肺胞が拘束されたように膨らめなくなる病気をまとめて、

「拘束性肺疾患」と呼んでいます。

塵肺症はその1つ。

あとは特発性間質性肺炎を覚えておきましょう。

 

「特発性」とあるので、

他に原因のある二次性ではありませんね。

二次性間質性肺炎の例としては、

膠原病随伴間質性肺炎があります。

特発性間質性肺炎は、

肺胞を隔てる肺胞壁(間質)を中心とした、

原因不明の炎症性肺疾患。

その中で一番多いのが、特発性肺線維症です。

 

肺胞のゴム風船の外側にある、

他の肺胞と貼りつき防止、かつ、

強度維持のための膜が間質だと思ってください。

この間質が線維化してしまうので、

肺胞がうまく膨らめません。

痰は出ないので、乾いた咳が出ます(乾性咳嗽)。

肺胞の外側が硬くて広がりにくいので、

呼吸時に捻髪音

(「ちりちり…」「ピチピチ…」)が聞こえます。

酸素をうまく体内に取り入れることができないので、

労作時(少し体を動かす)と呼吸困難が出ますよ。

指先が太鼓をたたく「ばち」のように

丸く膨らむ「ばち状指」になることも特徴です。

 

いかんせん原因が分からず、

酸素療法以外の有効対策がありません。

できるだけ労作を最小限に抑える工夫が必要です。

入浴やトイレへの移動だって、立派な「労作」です。

かぜ感染や気管支炎を起こすと、

一気に急性増悪の危険性があります。

そのときには緊急入院という選択肢も

ためらわないでくださいね。

 

(2)院内感染による肺障害と肺結核

院内感染の原因は

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や緑膿菌。

肺炎球菌や結核菌も多めです。

耐性菌の存在と、

かかった後に重症化しやすい状態にあることに注意です。

肺炎球菌はそもそも敗血症を起こしやすい菌。

病院にかかっている以上、

「どこかがおかしい」はずです。

「おかしい!」のせいで免疫系が弱っていたら、

一大事です。

ここでは、結核菌についておはなししますね。

 

結核というのは、

抗酸菌属の結核菌がヒトに感染して発症するもの。

抗酸菌だけど結核菌ではないものが

肺炎を起こすこともあります。

そちらはヒトからヒトへ感染しないので、少し安心。

治療自体は、結核菌によるものと同じになります。

 

結核の主流は肺が病巣になる「肺結核」。

くしゃみ、咳、会話時に飛び出した小粒子を吸い込んで、

細気管支や肺胞に入り込んで増えたものが原発巣です。

あとは貪食した単球(マクロファージ)の中で増えて、

肺の入り口(肺門)付近のリンパ節でも病巣を作ります。

ここでおとなしく(石灰化)なれば、

発症せずに免疫獲得。

 

約1割がおとなしくならずに発症し、

転移を起こすと粟状結核です。

ただ、おとなしくなった結核が

ずっといい子でいるとは限りません。

免疫が弱る(もしくはおかしくなる)と、

半年から数十年後でも血行にのって全身に転移しまくります。

これが二次結核です。

免疫抑制やがん、低栄養や過労、加齢、

糖尿病や腎症等の代謝性(消耗性)疾患で

二次結核が起こりえます。

体にとっては「弱り目に祟り目」です。