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11 精神のおはなし(2)双極性障害、統合失調症、物質使用障害、ストレス障害(2)

そう状態は急に悪化することがあるので、

入院が必要なことが多くなります。

双極性障害のうつ状態には

一気にそう状態に移行する可能性があるので、

抗うつ薬を使わないことが原則です。

 

再発予防には本人のみならず、

家族ぐるみで双極性障害というものを

理解する必要があります。

初期兆候で早く受診すれば、

薬等でコントロールしやすくなりますね。

もちろん、薬だけでなく、

睡眠をはじめとする

生活リズムから整えていくことが大事です。

発症は30代以前が多く、

うつ状態から始まるとうつ病と間違われることもあります。

再発の傾向は、うつ病と同じですよ。

そう病相が少なくとも1回あるものは双極性障害Ⅰ型。

そう病相がなく、

軽そう病相と抑うつ病相が少なくとも1回以上あるものを

双極性障害Ⅱ型と呼んでいます。

 

双極性障害Ⅱ型では軽そう病相のときに

「調子が良くなった、もう平気だ!」と

勘違いしてしまうことがあります。

社会生活上で問題を生じにくいことからも、

このときに薬をやめてしまいがちです。

そして薬の効果が切れて、

軽そう病相が終わると

「うつが再発した…」と誤解してしまうのですね。

ちゃんとした知識さえあれば、

薬をやめずに良好なコントロールを

続けることができるはずです。

 

なお、1年に4回以上の病相が出る急速交代型も

10~15%ほど見られます。

数か月で気分が大きく変わりますので、

本人も周囲も振り回されがちです。

事前の情報提供の必要性が高いこと、分かりますよね。

 

2 統合失調症

精神の領域でもう1つ大きな区分があります。

統合失調症と呼ばれる状態です。

主に思春期に発病する、

特徴的な思考障害・自我障害・感情障害・人格障害等が主な症状。

その多くは慢性に経過する原因不明の精神の病気で、

2002年までは

「精神分裂病(精神分裂症)」とも呼ばれていました。

詳細な原因は不明ですが、遺伝的素因、心因ストレスをもとに

神経伝達物質のバランス異常が

関連していることは分かっています。

ここではドーパミンやセロトニンが関係しています。

人口の約1%(約100人に1人)で発症するとされるので、

結構身近な病気ですね。

 

統合失調症には「陽性症状」と「陰性症状」があります。

陽性症状の代表は幻聴、被害妄想、考想伝播、滅裂思考。

「自分の考えが知られてしまう」又は

「相手の考えが読める」というのが考想伝播。

「頭の中が混乱してまとまらない!」が滅裂思考です。

陰性症状の代表は意欲低下、注意低下、自閉的生活。

「外出なんかしたくない、

着替えもせずに寝てばかり…」が自閉的生活の例。

そう病相とうつ病相を極限化したようなイメージですね。

 

さらに生活機能を障害する認知機能障害も加わります。

「計画を立てられず、

臨機応変も効かない…」ような実行機能の障害や、

「同じ仕事は短時間しか続かない」といった注意の障害。

言ったことも言われたことも忘れてしまう

言語的記憶の障害も出てきます。

前頭葉や側頭葉の機能障害が

起こっていることが考えられますね。