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4 セントラルドグマの理解・確認(2)

前回確認したように生物は細胞で出来ているので、

細胞分裂は

「自己の維持」と「種の保存」の基本になります。

種の保存には減数分裂が必要になりますが、

それも大きな意味では「細胞分裂」ですよね。

異物(微生物)も「細胞」でできていますので、

細胞分裂をして増えていく

(増殖していく)ことに違いはありません。

 

では、生物以外では?

 

ウイルスは、微生物学の対象ですが「生物」ではありません。

「自分一人(ウイルス1個)」では増えることができないのです。

だから自己を増やしたかったら、

他の細胞に感染する必要があります。

入り込んだ細胞のセントラルドグマを利用して、

ウイルスの情報をコピーし、ウイルスの殻を作ります。

利用するだけ利用して、あとは細胞を壊して外に出ていきます。

…利用された細胞は、たまったものではありませんね。

 

だから免疫の働きで異物を追い出す、

というおはなしは先に確認した通りです。

ここではもう少し、ウイルスの

(細胞を利用した)増殖について見ていくことにしましょう。

 

ウイルスにはDNAウイルスとRNAウイルスがあります。

ウイルスの情報を記録しているものがDNAか、RNAかの違いですね。

この違いは「細胞の利用方法の違い」になってきます。

 

DNAウイルスは、

細胞が「DNAのコピーミスを直す仕組み」を利用して

ウイルスを増やします。

自分の情報(ウイルスDNA)を、

細胞内にもともとあるDNAにしれっと組み込んでしまうのです。

もちろん、組み込むために使う酵素も細胞内にあるものを借用。

あとは細胞がタンパク質を作るついでにウイルス殻を作ってもらい、

ウイルス情報も複製してしまえば、ウイルスの増殖一丁上がり。

一度組み込まれてしまえばセントラルドグマそのまんま…

これがDNAウイルスです。

 

では、RNAウイルスはどうかというと。

2つのやり方があります。

1つはウイルスRNAがそのままmRNAのように翻訳もとになる方法。

もう1つはウイルスRNAからウイルスDNAを作り、

それを細胞のDNAに組み込む方法です。

…セントラルドグマで確認した矢印と、逆になりますね。

DNAからRNAを作るのは「転写」。

その逆ですから、RNAからDNAを作るのは「逆転写」になります。

 

当然、この仕組みは細胞の中にはありません。

ウイルスの中に逆転写酵素が入っているのです。

RNAウイルスは細胞内にウイルスRNAと逆転写酵素を注入。

逆転写酵素がウイルスRNAをもとにウイルスDNAを作り(逆転写)、

あとはDNAウイルスと同様に細胞DNAに組み込んでいきます。

この先はDNAウイルスと同じですね。

 

RNAウイルスは、

今紹介した2つのやり方で自己を増やしていきます。

多くのRNAウイルスは1つ目の(直接mRNAになる)方法で増殖。

2つ目の逆転写を採用しているウイルスは、

レトロウイルスの一群くらいです。

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や、日本脳炎ウイルスが代表ですよ。