12 各論7:呼吸(中枢・精神):⑧うつ・双極性障害の薬(7)
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の例としては、
ミルナシプラン塩酸塩(トレドミン)をご紹介。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00056703
禁忌は、本剤アレルギーの人、尿閉や前立腺疾患の人、
MAO阻害薬使用中の人ですね。
MAO阻害薬は、併用禁忌薬になっていますよ。
慎重投与対象は肝臓や腎臓に障害のある人、高齢者。
緑内障や眼圧亢進のある人、排尿困難のある人。
これらは抗コリン作用が怖い人たちですね。
脳の器質的障害や衝動性の高い併存障害のある人、
自殺念慮・企図のある人や統合失調症素因のある人、双極性障害の人も慎重対象。
精神状態悪化の危険と、そう転危険がありましたね。
電気系の変化としててんかんのある人、心疾患のある人、高血圧の人。
そして小児も慎重投与対象です。
…一瞬「小児にも安全に使えるのか?!」と期待してしまいますが。
小児に対する安全性は未確立のまま。
そして「18歳以下のうつには効果がないかも」と海外から報告されています。
妊娠・妊娠可能性のある人に対しては「やむを得ぬ」使用のみ。
やっぱり乳汁に移行して、動物実験で胎児への移行と死産児が報告されています。
併用注意薬は少々少なめ。
今まで確認してきた「うつ」の薬の中では「使いやすい方」になりそうです。
アドレナリンやノルアドレナリンは、
併用で心血管作用が強く出る可能性があります。
強心薬のジゴキシンも強く効きすぎてしまい、
頻脈や起立性低血圧を起こす可能性がありますね。
降圧剤のクロニジンは、降圧効果が弱まってしまいます。
本剤も併用薬も効果が強まるのはバルビツール系の薬やアルコールといった
中枢神経抑制作用のあるもの。
そしてセロトニン症候群を起こす可能性があるものとして、
スマトリプタンコハク酸塩(5-HT受容体作動薬)と
メチレンブルー(MAO阻害薬)、炭酸リチウムの名前が並んでいます。
まず、スマトリプタンコハク酸塩はヒスタミン受容体作動薬ですが…
「片頭痛」の薬でもあります。
普段から頭痛薬を使っていたら、知らずに併用状態になって
急にセロトニン症候群が出てくるかもしれません。
次にメチルチオニウム塩化物水和物(メチレンブルー)はMAO阻害薬ですが…
こちらは中毒性メトヘモグロビン血症の薬でもあります。
急性薬物中毒で、ヘモグロビンの鉄が変になってしまうものです。
多くは飲んだ薬のせい。
例えば虚血性心疾患の薬(メトクロプラミド)などで起こりえます。
そして炭酸リチウム(トーマス)は、双極性障害の「そう」状態に使う薬です。
「そう」の薬と「うつ」の薬を同時使用するとは考えにくいのですが…。
併用してしまうとセロトニン症候群の危険があることは
覚えておいてくださいね。