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4 ケース4:輪郭のない世界(5)

あなたは、ちゃんと最善を尽くしていますか?

医師としては、もう何をすべきか分かりますよね。

勤めている病院のレベルによって要求水準が変わってきます。

例えば、農村の一診療所なら、必要に応じて転院させる必要が出てきます。

医師はどこまで行っても、

自己の技術鍛錬と医療の進歩に追いつくための勉強からは逃れられません。

自分は医師じゃないから…と読み流している人はいませんか?

看護師や作業療法士、理学療法士だって同じことですよ。

裁判所はこう言っています。

病院は医療従事者にちゃんと要求水準の医療行為をさせてね。

医療従事者が水準に達しないせいで、患者さんに損害を与えたら賠償だよ!

つまり、医療従事者全体がどこまで行っても勉強からは逃れられないのです。

「えー!勉強なんてやだよー!」

 

そんなことを言っていてはいけませんよ。

そもそも、勉強は机に向かうだけではありません。

そして、今要求されているレベルが分からないと

どこまで勉強していいのかが分かりません。

だから、外堀から埋めていきましょう。

 

まず、誰もができていなければならない最低限

国家試験で問われ、学校の実習で身に着けていなければならない技術です。

患者さんの生命・安全に直接関係するところなので、

初年度研修やインターンで身に着けるはずです。

次に、1つ上のレベル。

医療計画における医療圏に合わせて考えると、

先の最低限は誰もがかかりうる一次医療。

続く二次医療の役割は、特殊な医療を除く一般的な医療の提供です。

一次医療機関からの受け入れと、三次医療機関への搬送ですね。

つまり、三次医療機関に行くかもしれない患者さんが来る前提の

医療提供が必要になってきます。

 

…具体的にこのレベルに至るにはどうすればいいのか。

今、あなたは周りにある医療器具・道具について

対象疾患、対象患者、使い方や危険性について分かっていますか?

医療従事者全員が、日常行う手技について習熟していますか?

ここまでオーケーなら、お次は「三次医療を要する患者さんの存在」です。

大事なことは「手に負えない患者さんが来るかも知れないぞ」と意識すること。

手に負えなかったとき、

自分達で何とかしようとせずに、即時に適切な他者にヘルプを出すことです。

他の病院へ搬送することは恥でも汚点でもありません。

それが患者さんのためであり、三次医療機関のためでもあり、

ひいては二次医療機関のためでもあるのです。

…これ、医療従事者の日々の医療行為全般に言えることです。

最高レベルの三次医療。

各専門領域ごとに、要求水準に達するように努力あるのみ。

もちろん、配属当初はそのレベルに達していない人もいることでしょう。

それなら、該当レベルに達している人の指示のもと、

日々経験を積みかさねていくのみ!

このとき他の医療機関の情報を得ることを忘れてはいけませんね。

裁判所は「自分の医療機関では提供できずとも、

他の医療機関で提供できる医療があるなら患者さんに情報を教えること」といいました。

ここで役立つのが学術誌・会報誌・学会や研修会・委員会です。

これらには他の医療機関の医療提供情報があふれていますよ。

やっぱり、各個人の努力なくしてはセーフになりません。

そしてそれだけでは足りないことも分かったはずです。

単独の医療機関でどうこうできる話ではないのです。

医療機関同士の連携のうえで、

患者さんに適した医療を提供することが必要なのです。

 

最終的には医療の輪が患者さんを救います。

あなたも、その輪の中で欠けてはいけない一員ですよ。