4 消化器系のおはなし(5)
食べ物の塊を呑み込めたら、そこは食道。
ただの道ではありませんよ。
「蠕動(ぜんどう)」で胃へと運んでくれる動く管です。
蠕動というのは、進めたい方向を広げて、
今、ものがあるところの少し後ろを狭める動き。
これなら、逆行せずに進みたい方向に動いてくれます。
これを胃につくまで次々に繰り返していくのです。
だから逆立ちや無重力空間で飲食をしても、
逆流せずに胃に食べ物や飲み物が届くのです。
…あえて実験はしないほうがいいですからね。
胃に食べ物が届きました。
さあ、タンパク質消化酵素ペプシンの出番です。
でも胃袋自体も筋肉…タンパク質で出来ていますね。
このままでは胃までペプシンで消化されてしまいます。
だから胃粘膜と胃粘液の出番です。
胃粘膜から出る胃粘液は、
胃の内側を覆いペプシンが胃自体に働くことを防いでいます。
これなら一安心です。
さらにペプシン産生細胞もペプシンそのものではなく
「その一段階前(前駆体)」でペプシンを分泌しています。
とどめにペプシンの至適pHは胃酸環境下のpH1~2。
これなら「胃自体には働かないし、
胃以外ではフルパワー分解をしない」
安全なタンパク質分解の仕組みが出来上がりです。
…でも、ちょっと注意。
胃の内容物が、食道側に戻ったら大惨事です。
だって、食道には胃粘液のようなカバーはありません。
しかも胃酸と一緒になって元気はつらつなペプシンが直撃です。
これが逆流性食道炎。
食道が一気に傷んでしまいますね。
胃の部分にはいろいろな名前がついています。
食道とのつなぎ目(胃の入り口)が噴門、
十二指腸とのつなぎ目(胃の出口)は幽門です。
上側のカーブが小弯(しょうわん)で、
下側のカーブが大弯(たいわん)。
胃下垂の人は大弯の部分が大きく垂れ下がっています。
胃底と呼ばれるのは入り口付近のエリアですよ。
さて、忘れちゃいけないのがビタミンB12吸収のための内因子です。
ちょっぴり復習。
ビタミンB12は、細胞分裂をするときに必要なビタミン。
細胞分裂の前に終わらせないといけない、
DNA合成で使うビタミンです。
同じように葉酸もDNA合成に必要でしたね。
あとは作る細胞の用途によっては、
鉄(赤血球のヘモグロビン)、
亜鉛(舌の味蕾)などのミネラルも必要です。
細胞の生まれ変わりの早いところは、
舌の味蕾・小腸上皮・赤血球。
胃の手術等で内因子がなくなると、
ビタミンB12吸収不良が起こって上記細胞が不足してしまいます。
それでは大変なので、
ビタミンB12の注射が必要になってきますよ。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220912更新)