6 ケース6:最後の親孝行?(5)
アウトにならずにできること。
看護師の立場だったらどうでしょうか。
患者の生命については、医師よりもできることは少ないでしょう。
でもケース5でおはなししたように、
看護師はこころとからだを看る専門職。
「こころ」に対しては、まだできることがあります。
まず、患者さんの心を支える援助ができます。
入院から徐々に悪化していく病気なら、
病の受け止めや自己決定権行使につながる情報提供等ができます。
本事件のAは意識がもうないよね?
こころを支えるなんて、もう不可能じゃないの?
寝ているときのあなたは、快・不快を全く感じませんか?
暑いと汗をかいてべたついて不快、
寒いと震えてゆっくり休息できなくて不快…ですね。
意識はなくとも、内分泌(ホルモン)や反射は環境に反応します。
ということは、
患者さんの意識はなくとも「安楽」の提供はでき、
決して無意味なことではないのです。
身体をさする、手を握る、体を清潔にする。
これらも「こころ」に対してできることです。
次に、患者さんの家族を支えることができます。
動揺・動転している家族に寄り添い、
感情表出を受け止め、話を聞く。
これだけでも、大きく違うものです。
ただ、現実の医療現場では時間が足りないかもしれません。
だけど「できること」として意識しておくと、
何かのときに、幾分優先順位を上げて対応できます。
医師にできないことを、看護師はできるんだ。
看護師にとっては無力感を解消できます。
医師は、看護師にその役目を任せてください。
以上が、ケース6でした。
終わりにするには少々歯切れが悪いですが…仕方ありませんね。
少なくとも、今、ここで考えたことは無駄になりませんよ。
医療職として、できることとできないことが分かる。
自分に置き換えて、
自分はどう終わりを迎えたいかについて考えるきっかけになる。
それだけでも、十分意味のあることなのです。