1 総論:微生物の大まかな分類(6):[補足]寄生虫
「微生物」には含まれませんが…
ヒトの体に入り込んで悪さをしうる存在として「寄生虫」もいます。
寄生虫はヒトや動物の表面や体内にとりついて(寄生して)、
その食べ物(栄養分)を横取りするもの。
「線」のような線虫、ひも状の吸虫、
節のある条虫…のように分かれています。
節足動物のノミやダニは寄生虫感染を媒介しますので
そこまで含めて「寄生虫」と呼ぶこともありますね。
戦後(昭和初期)の日本では、寄生虫が蔓延していました。
6割以上の人に回虫(線虫の一種)感染が見られた…と言われています。
その後上下水道整備に代表される公衆衛生の改善により、
現在の日本では耳にする機会がぐんと減りました。
肝炎を引き起こす肝蛭虫、肝吸虫(ジストマ)、各種住血吸虫等は
患者数が減少し続けています。
しかしキツネの寄生虫エキノコックス(条虫の一種)は増加傾向にあります。
野ネズミに寄生し、野犬やキツネに食べられ、
糞便を介して再度野ネズミに…というのがエキノコックスの生活環。
野犬やキツネの糞便が身近にあると、
土壌や水を経てヒト体内に入り込んでしまう可能性があるのです。
エキノコックスに効く薬はなく、
肝臓や肺、脳にも寄生する危険な寄生虫です。
「どんなに可愛くても、
野生のキツネに触ってはいけない」理由がここにあります。
また、海外ではまだ寄生虫がたくさん生息しています。
主に水や食べ物から体の中に入る(経口感染)なので、
海外旅行先で生水、生野菜、生の魚介や肉を口にするのは危険行為ですね。
なお、一部の寄生虫は皮膚から直接入り込む「経皮感染」の形をとります。
川や湖、土の上を裸足で楽しむことも、これまた危険行為です。
昔、日本の特定地域にいた「日本住血吸虫」は、
小さな淡水貝(ミヤイリガイ)を中間宿主として
経皮感染する困った寄生虫でした。
日本住血吸虫のいる地域の中間宿主を退治した結果、
現在、日本住血吸虫は「根絶報告」がされていますよ。
寄生虫について詳しく知りたい人は、
各種ホームページや寄生虫博物館などで調べてみてくださいね。