11 各論5:細菌(2)桿菌のグラム陰性(2)
(c)コクシエラ属
続いて、動物に関係のあるコクシエラ属、ブルセラ属、フランシセラ属。
トップバッターはコクシエラ属です。
Q熱の原因になりますね。
以前は(後で特殊組として紹介する)リケッチア科に含まれていたので、
少し前の本では「リケッチアがQ熱の原因」と書かれているはずです。
コクシエラ属は鳥類、哺乳動物(牛、山羊、羊など)に
不顕性感染しています。
主に哺乳動物の出産時(羊水のエアロゾル)から感染する人畜共通感染症。
Q熱は「不明熱(Query fever)」という意味で、
インフルエンザのような高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛が出ます。
潜伏期が2~3週間で、症状が出るのは約2週間。
自然治癒しますが…
弁膜症などの基礎疾患があると心内膜炎から死に至ることもありますよ。
(d)ブルセラ属
ブルセラ属は動物にとっては重大細菌です。
家畜になる山羊、牛、豚の流産原因菌ですからね。
ヒトにとっては地中海熱(ブルセラ病)の原因です。
創傷もしくは粘膜(気道)からの感染で、
リンパ節で増殖して波状の熱が出てきます。
一応、ヒトの胎盤成分は山羊、牛、豚とは違うので、
ヒトの流産原因ではないことをお忘れなく。
(e)フランシセラ属
フランシセラ属は野兎病の原因。
ダニが媒介する、野生のげっ歯類(ウサギやリス等)に感染する病気で、
動物との接触や生肉経由でヒトに移ります。
ヒトに入り込んで、3~10日が潜伏期。
それが過ぎると入り込んだところ(侵入部)に潰瘍ができ、
局部のリンパ節に出血性の炎症を起こします。
細菌が血液中に入り込んで増える菌血症を起こすと、
高熱が出て顔が赤くなり、意識朦朧な状態(チフス様症状)になることも!
ヨーロッパ、ロシア、北米ではかなり多い病気です。
海外での食事や動物との触れ合いには十分に注意してくださいね。
日本でも東北地方で発症報告がありますよ。
(f)ボルデテラ属
好気性菌の最後はボルデテラ属で締めくくりましょう。
百日咳菌がいるところですね。
百日咳のスタートは、百日咳菌が気道上皮細胞にくっつく(付着)ところ。
そこで増えて、繊維状血球凝集素(FHA)を作ります。
5~20日の潜伏期を経て、風邪に似た症状のカタル期に入ります。
このときに増えた百日咳菌を盛大に排出。
周囲に感染を広めるのはこのタイミングです。
10日ほどのカタル期が終わると、特徴的な咳が出る痙咳期。
百日咳菌の出す毒素(PT)のせいで、
「5~10回続けて咳が出た後に、
笛のような音を立てて息を吸う(吸気的笛声)」状態になります。
この苦しい状態が2~4週間続いた後、
普通の咳が2週間ほど続く回復期を経て治っていくのです。
当然、痙咳期の体内は酸素不足に陥っています。
合併症として、無呼吸、肺炎、けいれん、脳炎も引き起こす危険な状態です。
特に乳児では重症化しやすく、
生後2か月未満で感染してしまうと死に至ることもあります。
だからこそ、予防接種が大事。
四種混合
(ジフテリア、破傷風、ポリオ、百日咳:DPT-IPV)がありますから、
ぜひ接種してくださいね。
ただ、成人後百日咳にかかる人がそれなりにいるところをみると、
ワクチンの効果は一生ものではないようです。