12 各論6:細菌(3)桿菌?らせん菌、スピロヘータ(2)
「らせん菌」よりもっとねじれたものは
「スピロヘータ」といいます。
キーホルダーの伸び縮みするコード
(スパイラルコード)のような形です。
ここに含まれるのがトレポネーマ属、ボレリア属、レプトスピラ属。
特に現在の日本でも怖い病気「梅毒」原因菌のいる
トレポネーマ属は大事ですよ!
A トレポネーマ属
トレポネーマ属の代表は、梅毒の原因になる「梅毒トレポネーマ」。
梅毒トレポネーマ自体は、
乾燥や42度の加熱ですぐに死んでしまう菌です。
消毒薬も効くので、一見、そこまで怖い菌には見えません。
この菌のこわさは、潜伏期の長さとその後の長期影響です。
15世紀以降、梅毒は性病として世界中へ広まった病気。
性交時の傷から感染し、潜伏期が10~30日にもなります。
しかも最初に出てくる症状が痛みのないしこり(硬性下疳)と
領域リンパ節の腫れ(無痛横痃:むつうおうげん)。
「局部が少し硬く腫れた?リンパ節がぐりぐり?
でも、痛くないよねぇ…」
…放置されそうなこの状態、
梅毒トレポネーマは増殖中で感染力のある状態です。
これだけでは病院に行って「梅毒第1期」と気付く人はごく一部でしょう。
「…痛くないから、ま、いっか」と放置している間、
梅毒トレポネーマは血液にのって全身に広がっていきます。
侵入(該当性行為)から半月~3か月たつと、
皮膚や粘膜にバラ色(ピンク~赤色:バラ疹)の斑点が出てきます。
骨や関節の梅毒性変化(関節痛等)もスタートです。
この「第2期」も、梅毒トレポネーマが増殖中かつ感染力のある状態。
そして派手な皮膚症状が出るおかげで、
梅毒と気付いて病院に駆け込める事実上のラストチャンスです。
その後は…「第3期」として症状が出るのは侵入から4~10年後。
もう該当行為の存在すら忘れているころですね。
しかも皮膚の潰瘍やゴム状の腫れ(ゴム腫)という比較的地味な症状。
ここまで到達してしまうと、中枢神経症状(認知症等)ももうすぐ。
「変性梅毒」と呼ばれる、
進行性麻痺や脳梅(脊髄ろう)が出現する第4期です。
影響は本人だけにとどまりません。
妊娠4か月ごろから胎児に経胎盤感染し、死産の原因になります。
胎児が生き残ることができても、先天梅毒にかかってしまうことに!
先天梅毒は生まれてきた後に第2期以降をたどります。
「生まれてきたら、いきなりバラ疹!」ですね。
梅毒にはワクチンはありません。
しかも現在の日本では患者数が増加傾向にあります。
性感染症予防の基本中の基本
「不特定多数とは関係を持っちゃダメ!
性行為時にはコンドーム!」を守ってくださいね。
抗生物質の大御所ペニシリンは予防的療法にも、
梅毒発症後にも使われますよ。
B ボレリア属
ボレリア属にはいろいろありますが…いずれも介在生物がいます。
ライム病ボレリアはマダニ、
回帰熱ボレリアはシラミが介在生物ですね。
これら介在生物に噛まれないことが一番の予防。
「回帰熱」というのは、
「熱が出て、急に熱が下がり、4~10日で再び熱が出る」サイクルを
3回以上、周期的に繰り返す熱の出方のことですよ。
C レプトスピラ属
レプトスピラ属には、
発熱と黄疸、粘膜出血が出るワイル病の原因菌が含まれます。
水たまりにいるため、雨の多い熱帯や亜熱帯では身近な存在です。
感染動物やヒトの糞尿から、水たまり経由でヒトの傷口へ。
日本には少ない病気ですが、
亜熱帯に属する沖縄では感染可能性がありますからね。
以上、球菌、桿菌、らせん菌と
細菌の形に注目しておはなしを進めてきました。
続いておはなしするのは、「細菌なんだけど…」という特殊組です。
マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアがここに入りますね。
それぞれ普通の細菌とは違う変なところがあるので
「特殊」として細菌の最後にまとめてしまったグループですよ。