12 各論6:細菌(3)桿菌?らせん菌、スピロヘータ(1)
一応は「桿菌のビブリオ属」なのですが…
少し曲がっているのがコレラ菌。
バナナのように「ちょっとねじれ?」ぐらいの形です。
コレラ菌は海水と淡水が混ざるところ(汽水域)が好みで、
海運(船)と一緒に感染を広げてきました。
現在日本にはいませんので、輸入感染症。
名実ともに「水際検疫」が必要ですね。
コレラ菌自体は胃酸に強く、弱アルカリ性が増殖に適した環境。
水や食べ物から体の中に入った後、
「胃酸がしっかり出ていれば少し安心、
もし胃酸分泌が不十分だと腸に到達したら一大事だ!」ですね。
腸管についたコレラ菌はコレラ毒素を作り、
腸の粘膜(上皮細胞)に
水と塩化物イオン(Cl⁻)を分泌させてしまいます。
腸の中に水が増えると…下痢ですね。
「米のとぎ汁様(白くて薄くてさらさら…)」の下痢で、
1日15リットルに及ぶことも!
そんな量の水が体から出ていったら、干からびてしまいそうです。
だからコレラによる死因は、
水分補給が追い付かないことによる脱水が大部分。
急いで水分を補給してください。
体の外に出ていってしまうのは水だけではありませんから、
補液(含む、経口補水)時には塩分も必ず一緒に。
もし口から飲めるなら、1リットルの水にスプーン1杯の食塩と、
スプーン4杯分の砂糖を追加してください。
口当たりを良くするだけでなく、体の中へと吸収しやすくするためにも、
お砂糖を追加してあげてくださいね。
コレラ菌よりももっとねじれが強くなってきたものは、
もう「桿菌」ではなくて「らせん菌」です。
イメージとしては「2~3回ぐらいねじれたかな?」ぐらいがらせん菌。
ここにはカンピロバクター属とヘリコバクター属が含まれます。
A カンピロバクター属
カンピロバクター属にはいろいろならせん菌がいますが、
看護師国家試験に関係あるのはカンピロバクター・ジェジュニぐらいでしょう。
カンピロバクター・ジェジュニは食中毒原因菌。
調理不十分な鶏や豚からヒト体内に入り、潜伏期は2~5日。
その後、下痢、腹痛、発熱が出てきます。
下痢は腐敗臭のする酢用弁で、ときに血も混ざります。
上下水道が普及していないと、鶏や豚の糞便汚染を受けた水の飲用から
ヒト体内に入り込む可能性もありますね。
そして多くはありませんが…
末梢神経の麻痺(ギランバレー症候群)を合併することがあります。
「たかだか食中毒」と言ってはいられませんよ。
B ヘリコバクター属
ヘリコバクター属といえば、ピロリ菌。
正式名称はヘリコバクター・ピロリですね。
胃酸でも元気な、かなり特殊な細菌です。
いわゆる途上国では感染率が70%を超え、「常在細菌?」ぐらいの勢いです。
飲食物からヒト体内に入るのですが…
多くは小児期に、知らず知らずのうちに感染したもの。
しかも日本では上下水道が普及していますので、
成人後の、普通の食生活ではピロリ菌に感染することはなさそうです。
「常在?」としてヒトに悪さをしなければよかったのですが。
一度悪さを始めるとピロリ菌の産生した酵素が胃粘膜を破壊し、
胃炎(急性胃炎、慢性活動性胃炎)を起こします。
放置してしまうと胃・十二指腸潰瘍。
さらには胃がんにもつながる可能性まであるのです。
ピロリ菌さえ除去すれば胃炎や潰瘍は治まりますので、
しっかり除菌してもらってくださいね。