13 各論7:ウイルス(1)DNAウイルス(7)
E パピローマウイルス科
さて次の大グループ、パピローマウイルス科のおはなしに入ります。
パピローマウイルス科の代表は、パピローマウイルスですね。
パピローマウイルスはエンベロープなしの正二十面体構造。
ウイルスタンパク質が入り込んだ細胞の増殖を活性化させるため、
乳頭腫(いぼ)や悪性腫瘍(がん)の原因になりますよ。
ウイルスは感染した細胞とともに排出されるため、
主な感染経路は接触感染。
顔などに出る扁平疣贅(ゆうぜい:これも「いぼ」)、
手足に出る尋常性疣贅の原因です。
生殖器に感染すれば性感染症(STD、STI)ですね。
外性器に出来る尖圭コンジローマの原因でもあります。
これらの原因は全部別タイプのパピローマウイルスです。
さすがに細かすぎるので、各病気の原因型まで覚える必要はありませんよ。
がんに関係してくるパピローマウイルスも、また別のタイプです。
子宮頚がんや肛門(直腸がん)、中咽頭がんの原因の1つになります。
直腸がんや中咽頭がんは、多様化した性行為の影響ですね。
治療としては、抗ウイルス薬(外用薬)。
がんに対しては外科的切除や放射線療法等も選択肢に入ってきます。
ワクチンもあるので
「がんを予防しうる」意味で定期接種してほしいですね。
がんのもとになる2つのタイプ対応の「2価ワクチン」と、
さらに尖圭コンジローマにも対応した「4価ワクチン」があります。
なお、以前はパピローマウイルスとされていましたが
独立して「ポリオーマ属」になったものにJCウイルスがあります。
日本人は多くが無症候性感染をしていて、それっきりなのですが…。
免疫状態が不十分になると、日和見感染症として表舞台に出てきます。
進行性多巣性白質脳症(PML)を起こしてしまうと、
生命の大ピンチですからね!