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14 各論8:ウイルス(2)RNAウイルス(7)

G トガウイルス科

トガウイルス科には風疹ウイルスのいるルビウイルス属と、

チクングニアウイルスのいるアルファウイルス属が含まれます。

どちらもエンベロープ付きの、正二十面体ウイルスです。

 

(A)ルビウイルス属

ルビウイルス属と言えば、風疹の原因「風疹ウイルス」。

主に飛沫を介した上気道感染で、気道上皮で増殖します。

だから鼻水(鼻汁)や痰(呼吸分泌物)と一緒に、

飛沫の形で体の外に出ていきますね。

あとは血液中にウイルスが出て、全身に感染が広がります。

感染の約半数は不顕性感染。

症状が出ても、発熱・発疹・リンパ節の腫れ(リンパ節の腫脹)。

多くは3日ほどで回復に向かうので、

風疹は「3日はしか」とも呼ばれます。

しかもほとんどは軽症で終わる…と聞くと、

全く重要なウイルスに思えませんが。

風疹ウイルスの本当の怖さは「妊婦への感染」です。

 

TORCHのRは、風疹(Rubella)ウイルスのR。

経胎盤感染を起こして、流産や死産の原因です。

もし胎児が生き延びることができても、各種の悪影響が残ります。

これが先天性風疹症候群。

白内障、心奇形、難聴が典型例ですが、

精神・運動・発達各種の遅滞が出てくることもあります。

妊婦自身は不顕性感染で済んでも、

胎児に対しては悪影響が出ることには注意しないといけません。

妊娠初期にかかると特に影響が大きいため…

なんとしても感染を予防する必要があります。

 

だからこそ、ワクチン(予防接種)の出番。

現在は法定接種として、

1歳児と小学校就学前の2回接種

(風疹と麻疹の混合生ワクチン)が行われています。

以前は「女性のみ」だったため、

一定年齢以上の男性はワクチン接種をしていないことも。

 

自分の風疹感染は、自分だけの問題ではありません。

男性も抗体検査をして、

抗体がないならワクチン接種(風疹単独の任意ワクチン)。

パートナーと自分の子どもを守ってくださいね。

ワクチン接種をしても抗体ができにくい人もいるため、

妊娠を希望する女性は(妊娠を考え始めたら早めに)

抗体検査をしておきましょう。

 

ここで注意!

風疹の予防接種は、生ワクチンです。

生きているウイルスを体の中に入れることになりますから、

妊娠中のワクチン接種はできませんよ。

 

先天性風疹症候群として生まれてきた子供は

1年以上ウイルスの感染源になります。

医療従事者は、院内感染に注意しないといけませんね。

感染症法5類の、「直ちに」届け出る必要がある病気です。

学校等も、発疹が消えるまでは出席停止になりますよ。

 

(B)アルファウイルス属

アルファウイルス属代表は、

感染症法4類のチクングニア熱の原因「チクングニアウイルス」です。

熱帯や亜熱帯地域に多く、今のところ日本では流行していません。

蚊が媒介するウイルスなので、検疫と蚊の駆除が大事になってきますね。

突然の高熱と強い関節痛が出て、発疹が出ることもありますよ。