14 各論8:ウイルス(2)RNAウイルス(14)
O コロナウイルス科
「コロナ」の名は、太陽のコロナのように、
エンベロープにウイルスタンパク質が出っ張っていることから。
コロナウイルス科に属する多くのウイルスは、
上気道感染を起こしてかぜ症候群のもとになります。
コロナウイルス科で覚えておく必要があるのは、
SARSコロナウイルスとMERSコロナウイルス。
重症急性呼吸器症候群(SARS)と、
中東呼吸器症候群(MERS)の原因ウイルスです。
この2つの呼吸器症候群は、感染症法2類感染症ですよ。
SARSコロナウイルスの感染は発熱、頭痛、筋肉痛で始まり、
重症化すると息切れ、呼吸困難を起こして低酸素血症になってしまいます。
特に高齢者や(糖尿病等の)基礎疾患があると重症化しやすく、
2002年に中国で発生した後700人を超える人の命が奪われました。
MERSコロナウイルスの症状も、SARSコロナウイルス感染症状とほぼ同じ。
重症例では腎症の合併も起こります。
2012年にアラビア半島で発生してから、散発的に感染者が出ています。
医療従事者への感染で大規模院内感染が起こることは、
韓国の例(1人の輸入感染者から180人以上が発症)から分かりますね。
SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス共に、
自然宿主はコウモリだと考えられています。
P フェニューウイルス科
リフトバレー熱の原因になるリフトバレー熱ウイルスと、
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の原因になる
重症熱性血小板減少症候群ウイルスが含まれるグループです。
これも以前はブニヤウイルス科に分類されていましたよ。
リフトバレー熱は牛・羊から蚊の媒介で感染するもの。
「蚊の媒介」ですから、4類感染症ですね。
発熱、頭痛、筋肉痛から始まり、
重症化すると出血傾向や網膜炎、脳炎が出ることに。
今のところアフリカ分布のウイルスですが、
「家畜対象動物(牛・羊)」と「蚊」が関係するので、
注意を怠らないでくださいね。
重症熱性血小板減少症候群は、マダニを介してウイルス感染します。
西日本を中心に、日本国内に広く分布しています。
発熱に加えて腹痛、嘔吐、下痢等の消化器症状が出て発症です。
頭痛やリンパ節の腫れ、
そして出血傾向(「血小板減少」)が出ることもありますよ。
重症熱性血小板減少症候群は感染症法4類感染症ですね。
以上が、RNAウイルスの有名どころの紹介。
大まかながら、各論のおはなしの終了です。
ここまで読み終えたら、改めて総論部分を読んでみてほしいのです。
途中で出てきた微生物の名前も見知らぬものではありませんし、
消毒・ワクチン接種や
スタンダードプリコーションの意味も変わってくるはずです。
むやみに怖がることなく。
必要なときに、必要な形で、
病気のもとになる微生物の侵入を防いでくださいね。