3 総論:侵入経路(7)市中感染・院内感染
微生物の人への侵入方法(感染経路)について
おはなししてきました。
ヒトを「宿主」、
微生物のうちヒトに病気を引き起こすものを「病原体」として、
「宿主-病原体関係」の整理でもありましたね。
ヒトを病気にする微生物は「病原性(がある)」といいます。
これは大腸の中にいるときの
「大腸菌」と「病原性大腸菌」の関係からも分かりますね。
そしてヒトの細胞に入り込みやすい度合いを「侵襲率」といいます。
病原性があって、侵襲率の高い微生物は「伝染病」として
予防・治療する必要があります。
日本での伝染病予防対策については、
あとで(「国レベルの微生物侵入を防ぐ方法」)おはなししますね。
微生物による病気が一定以上広まると、
「流行」という状態になります。
「インフルエンザの流行」は、冬になると毎年耳にする言葉ですね。
時々、どこかで流行するのは「散発的流行」。
特定の地域で一定期間流行が続くと「地域流行」です。
感染が爆発的に広まると「パンデミック」ですよ。
これら「流行」からイメージするのは、
普通の生活で起こる「市中感染」。
通勤、通学で移された…などですね。
でも、起こってほしくないことですが
病院や施設等で微生物の侵入・流行が起こる「院内感染」も存在します。
院内感染菌で有名なのはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と
VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)。
他にもペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、
基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌や
カルバペナム耐性腸内細菌科細菌(CRE)などがあります。
漢字で正式名称が書いてあれば、どういう菌か想像はできるはず。
有名どころのMRSAとVREは
いきなり略号で書いてあることが多いので、
何の略か思いだせるように早めに慣れておきましょうね。
院内感染が起こると困る点はいろいろありますが。
「そもそも体が弱っている人(易感染性宿主)が
いるために重症化しやすい」ことと、
「薬剤耐性菌が生まれて、広がる可能性がある」ことは大問題です。
日和見菌のおはなしをしましたから、
他の病気等で体が弱っているときには
普段おとなしい微生物も
「ヒトに悪さをする存在」になりうることは分かりますね。
その状態に、さらに体の外から病原性の微生物が入り込んでくるのです。
…体の防衛部隊(免疫)、圧倒的人手不足です。
加えて、薬剤耐性菌が何らかのきっかけで生まれても、
他の人へと移らなければそこまで脅威ではありません。
ところが病院ではすぐそばに体の弱っている「他の患者さん」がいます。
ご丁寧に「他の患者さんへと微生物を運んでくれる医療職」もいます。
しかも「いつも使っている薬が効かない!」のでは、
「病院内パンデミック状態!」になってしまいます。
だから医療職は、
院内感染が起こらないように細心の注意を払う必要があります。
これも「個人(?)レベルで微生物の侵入を防ぐ方法」のところで
おはなししますからね。
この辺りで、後半の「免疫」のおはなしに入ることにしましょう。
とはいえ、免疫の基本については生化学(や基礎生物)で勉強済みのはず。
できるだけ簡単に復習しつつ、
微生物で必要な内容も追加していきますよ。