4 総論:免疫(3)炎症
炎症は、赤くなって(発赤)、熱をもって(発熱)、
腫れて(腫脹)、痛むもの(疼痛)。
発赤・発熱・腫脹・疼痛をまとめて「炎症の4徴」ともいいますね。
これらは、微生物に侵入されて、
白血球たちの応援要請によって起こるものです。
まず、全身をパトロール中(血液中にいる)の仲間を集めるためには、
侵入部位周囲の血流を増やす必要があります。
白血球たちの出したサイトカインのIL-1(インターロイキン1)や
TNF-α(腫瘍壊死因子α)が、血管内皮に働き血管が拡張します。
これで血液がたくさん流れ(発赤)、
同時にその部分が熱く感じられるようになります(発熱)。
体表近くでは本来細胞内酵素が本気を出せる
深部温(37.5~38℃)より低いので、
「熱を持つ」ことで白血球たちが活発に働ける良い環境になります。
そして血管から微生物侵入部位へと出ていけるように(「好中球の遊走」)
血管の透過性が亢進されると、
血漿の水分も組織の方へと出ていくため腫れてきます(腫脹)。
このときちょっとお手伝いをしてくれるのが「補体」というタンパク質。
血管の透過性を上げるだけではなく、
異物(微生物)にくっついて一部の細菌やウイルスを殺すことができます
(「膜傷害複合体の形成」)。
好中球やマクロファージが異物を食べやすくする働きもありますね。
そして炎症物質として出るプロスタグランジンが、
痛みを感じる自由神経終末を刺激するので痛み(疼痛)を感じるのです。
プロスタグランジンは、
生化学の脂質代謝で出てきた「アラキドン酸カスケード」の1つでしたね。
生化学で初めて目にしたときの
「炎症?痛いのに、なんでこんな働きがあるの?」の答えは、
免疫について一通り分かったうえで「微生物侵入の排除」を考えれば、
理解できるようになりましたからね!
炎症性サイトカインにはIL-1、TNF-αの他に
IL-6(インターロイキン6)とIFN-γ(インターフェロンガンマ)もあります。
IFN-γは、マクロファージを元気にして(マクロファージ活性化)、
ヘルパーTリンパ球をTh1に分化させるサイトカイン。
普段のマクロファージでは貪食できても分解できない(生き残られてしまう)
レジオネラ菌、サルモネラ菌、リステリア菌も、
IFN-γで元気になった後なら一気に分解できるようになります。
そしてTh1が増えることになりますから、
細胞性免疫が活性化されて、
細胞内に入り込まれてもしっかり処分できる…ということですね。
かたやIL-6は肝臓に働いて、
異物排除に必要なタンパク質
(「急性期タンパク質」)作りを促進させる働きがあります。
例えば、先に出てきた補体。
あとは侵入してきた微生物を壊すためのタンパク質分解酵素や、
「出血してるかも!ふさがなきゃ!」に使う
血液凝固因子も作る必要がありますね。
あとはC反応性タンパク質(CRP)も作られますね。
「CRPが出たら、どこかに急性炎症があるぞ!」という証拠です。
生化学のタンパク質でおはなしした逸脱酵素ではありませんが、
CRPも一緒に覚えておくといいですね。