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12 各論7:呼吸(中枢・精神):⑧うつ・双極性障害の薬(4)

三環系抗うつ薬を代表してイミプラミン塩酸塩を紹介してきましたが。

はっきり言って

「あれやこれや、注意しなくちゃいけないことが多すぎ!」が本音だと思います。

ほんの少しだけ改良されたのが、四環系抗うつ薬。

炭素でできた環が4つあるので、「四環系」です。

マプロチリン塩酸塩(ルジオミール)で紹介しますよ。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00060288

 

禁忌と併用禁止は、三環系抗うつ薬イミプラミン塩酸塩と同じ。

小児や妊娠・妊娠可能性のある人に対しての安全性未確立も同じですね。

ただし、禁忌のアレルギー対象が「本剤」に限定されています。

じゃあ三環系抗うつ薬にアレルギー反応が出てしまった人でも

安心して使えるかというと…そうとは言い切れません。

 

慎重投与対象は三環系抗うつ薬イミプラミン塩酸塩とかなり重なり、

「三環系抗うつ薬に過敏症のある人」も慎重投与対象に追加されています。

これは三環系抗うつ薬で過敏症を起こすと、

四環系抗うつ薬でも過敏症が起きることの多い「交叉過敏反応」のせいですね。

一応、三環系抗うつ薬イミプラミン塩酸塩の慎重投与対象から、

「てんかんの人」と「低カリウム血症の人」は外れています。

 

では、併用注意を確認してみましょう。

併用薬の効果が弱まるものは、三環系抗うつ薬と同じく

降圧薬のグアネチジンと副交感神経刺激薬ピロカルピン。

併用薬の効果が強まるのは三環系抗うつ薬イミプラミン塩酸塩と同じ。

交叉過敏反応ではありませんが、

「三環系抗うつ薬で報告されたもの」も併用注意薬に入っています。

 

本剤の効果が弱まるものは三環系抗うつ薬イミプラミン塩酸塩と同じですが、

そこにβ遮断薬のプロプラノロールが追加されています。

 

では、本剤の効果が強まるものはどうか。

中枢神経抑制薬は(サリドマイドまで)三環系抗うつ薬と同じ。

選択的セロトニン受容体阻害薬(SSRI)は併用注意ですが、

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)は外れていますね。

アドレナリン作用薬と抗コリン作用薬、

フェノチアジン系は三環系抗うつ薬と共通です。

ただ、フェノチアジン系ではけいれん発作も出る可能性がありますね。

 

代謝酵素を介して本剤の効果が強まるものは、

抗菌薬テルビナフィン、消化管潰瘍薬シメチジン、抗不整脈キニジン、

多動性障害薬のメチルフェニデート等は含まれていますが、

抗ウイルス薬と黄体・卵胞ホルモン製剤は併用注意から外れました。

 

心電図や電気刺激に関係する併用注意薬からは、

抗利尿薬のデスモプレシンが外れましたね。

追加されたのは抗不安薬・睡眠薬のベンゾジアゼピン系。

ベンゾジアゼピン系は併用状態から中止するとけいれん発作が出る可能性があります。

あと、サルファ剤(抗菌薬)のスルファメトキサゾールやトリメトプリムは、

「三環系抗うつ薬でうつ悪化の報告があったから」。

多動性障害に使うアトモキセチンは、

併用で作用が相互に増強する可能性がありますよ。