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5 総論:国レベルの侵入を減らす方法(1)

微生物の侵入経路を確認し、

体に入られた後の防御システム(免疫)についても確認しました。

いくら免疫が働いているとはいえ、

やっぱり体に入り込む微生物は少ない方がいいですよね。

だから、侵入を減らすための方法についてのおはなし。

国レベル(感染症法、予防接種を含む公衆衛生)を先にして、

その後で個人(?)レベルのおはなし

(スタンダード・プリコーション、消毒・滅菌)をしますよ。

 

まずは名前がそのものずばり「感染症法」から。

感染症をできるだけ最小限にとどめるための方法について定めた法律です。

微生物に侵入されている人や物を国内に入れない「検疫」。

特定の微生物に侵入された人を発見次第、適切な病院に入院(隔離)する。

入院対象になった人と接触した人を検査・追跡し、

入院対象になった人の周辺環境の消毒も必要になるかもしれません。

そんな大げさな…と思うかもしれませんが、

こうでもしないと

国全体がまともに動かなくなってしまう危険があるのです。

 

ちょっとだけ脱線。

世界史を勉強してきた人は、中世ヨーロッパのペストの猛威を学んだはず。

14世紀中ごろ、ヨーロッパの人口の約1/3(2000万人から3000万人)が

ペストで亡くなりました。

ノミのいるネズミがペスト菌を広め、「黒死病」がヒトの命を奪ったのです。

命を取り留めた人も、発症中は治るまで何もできません。

国にとって国民が激減し、国民が活動できないということは、

国の働き全体が機能不全に陥ってしまうのです。

だから、大げさにも見える

「国レベルの微生物侵入を防ぐ対策」が必要になるのですよ。

 

脱線からおはなしを戻して。

感染症法の対象は、全ての「病原性微生物」ではありません。

病原性微生物の中でも、特に悪影響が大きいものが対象です。

簡単に、法定伝染病のおはなしをしておくことにしましょう。

小児の「学校感染症(決まった期間は出席停止)」とも

関係してくるところです。

 

感染症法は特に

「集団としてヒトに影響の大きい病気(をもたらす微生物)」について

1類から5類に分けています。

近年は法律改正が追い付かない新しい感染症の拡大に備えて、

「新型インフルエンザ等感染症」「指定感染症」

「新感染症」の枠も追加しました。

 

「指定感染症」は、国(厚生労働大臣)が指定する、

1年間は1類から3類と同じように扱う感染症のこと。

「新感染症」は、1類に書かれていないけど、

「1類として扱う」感染症のことです。

 

…でもただ「1類」と書かれても、何が何だか分かりませんよね。

だから看護師国家試験に関係しうる範囲内で、

できるだけ簡単に説明していきますよ。