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4 薬に共通するおはなし(3):薬の働き(5)

2022年11月28日

催奇形性が問題になるのは、

「お腹の中にいるとき(胎児期)」です。

受精卵からヒトとして生きていける体を作るため、

細胞分裂をたくさんしている時期ですね。

 

胎児期(発生)のおはなしは、

解剖生理学の生殖器系のところでしてあります。

ヒトとしての形を作っている最中に

不具合が起こってしまうと、

「ヒト」として生きていけません。

原因になりうるTORCH等による先天異常、

染色体振り分けミス、

放射線による異常についてもそこでおはなししてあります。

 

今回するおはなしは、

そこ(8週くらいまでの異常)よりも後に起こった不具合。

ヒトとして生きていけるけど、

何か変なところができてしまった「奇形」です。

薬が奇形を引き起こす原因になっているとき、

その薬には「催奇形性がある」といいます。

12週までに働いた薬による奇形は

外から見て分かるものが多く、

それ以降(~16週)に働いた薬による奇形は

外からは見えないけど…というものが多くなります。

 

では、なぜ胎児に薬の影響が及ぶのか。

胎盤を、簡単に復習しましょうか。

胎盤は胎児にとって肺であり腎臓でもあります。

母体血から酸素と栄養分を受け取り、

二酸化炭素と不要物を母体血に渡すところですからね。

この「(母体血から)受け取る」ときに、

薬も受動輸送で胎児側に入り込んでしまうことがあります。

 

受動輸送には2通りのパターンがありました。

「脂溶性は細胞膜の脂に溶ける」と

「水溶性は水に溶けて水と一緒に…」でしたね。

だから「(催奇形性を示す)

妊娠可能性・妊娠中は飲んではいけない薬」は

「脂溶性の薬」と

「水と一緒に細胞膜を抜けていく薬」です。

 

「水と一緒に細胞膜を抜けていく」には、

それなりの小ささが必要。

イオン化するもの(「~イオン」になるもの)は、

小ささ合格。

それ以外でも分子量

(その薬の成分になっている分子の大きさ)が

1000以下が細胞膜を通り抜ける目安です。

これ以上大きいなら、胎児血には流れていきません。

分子量のおはなしについては

(深入りする必要はありませんけど)

生化学や基礎化学を見直してくださいね。

一度奇形が起こってしまうと大変ですから、

ちゃんと添付文書に書いてありますよ。

「禁忌(絶対にダメ!)」として、

添付文書の商品名のすぐ下。

あとは相互作用の次のブロックあたりに

「妊婦・産婦・授乳婦等への投与」という段落があります。

そこにも

「(その人たちには)投与してはいけませんよ」とあります。

 

じゃあ、胎児に薬が届いてしまうと、

それらの薬はなぜ奇形を起こしてしまうのか。

それは細胞の正常な増殖を「変!」にしてしまうから。

このおはなしには、

細胞内での薬の働きについて理解が必要ですね。

次回、細胞内で薬の働く仕組みをおはなししていきましょう。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20221128更新)