6 総論:個人(?)レベルの侵入を減らす方法(5)
そして「弱い消毒薬」のおはなし。
効く対象は原則として「一般的な細菌」だけになります。
芽胞には当然効かず、
真菌とウイルス(エンベロープの有無に関係なく)にも効果は不十分です。
ベンザルコニウム塩化物、クロルヘキシジングルコン酸塩、
塩酸アルキルジアミノエチルグリシンがここに含まれます。
ベンザルコニウム塩化物とクロルヘキシジングルコン酸塩は「逆性セッケン」、
塩酸アルキルジアミノエチルグリシンは「両性セッケン」とも呼ばれますね。
両性セッケンというのは、セッケンの1つの分子(粒)の中に
プラス(陽イオン基)とマイナス(陰イオン基)があるもの。
逆性セッケンというのは、
普通のセッケンではマイナス(陰性荷電)になるところが
プラス(陽性荷電)になっているもののことです。
特に逆性セッケンでは普通のセッケンと同時に使うと、
プラスとマイナスが1つになって(「プラスマイナスゼロ」になってしまい)
効果がなくなってしまうことには注意しないといけませんね。
ベンザルコニウム塩化物は「弱い消毒薬」ですが、
皮膚や粘膜に使え、便処理以外に適用がある結構便利な消毒薬です。
とはいえ、基本的には「弱い」グループ。
細菌(と真菌)以外の微生物には効かないことを忘れずに。
エチルアルコールと混ぜた「ウェルパス」を病棟で良く使うことになるはずです。
クロルヘキシジングルコン酸塩は代表的な「弱い消毒薬」。
一般的な細菌には効きますが、特殊な細菌やそれ以外には効きません。
しかも細菌でも一部のもの(緑膿菌など)には抵抗性を持つものがあります。
消毒液中で増殖・繁殖されてしまう可能性があるので、
エタノールではありませんが、やっぱり作り置きは禁物です。
あと、「粘膜には使えない」ことを頭に入れておきましょう。
含まれるエタノールの刺激もさることながら、
ショックや神経障害(特に中枢と聴覚)が起こる危険性があるからです。
普段目にする「ヒビテン」は、
クロルヘキシジングルコン酸塩のことですよ。
塩酸アルキルジアミノエチルグリシンは、
「弱い消毒薬」ながら結核菌にも効きます。
ただし適している対象は少なく、
ほぼ器具専用(金属・非金属問わず)ですからね。