5 薬に共通するおはなし(4):代謝(M)・排泄(E)(1)
しばらく細胞内のおはなしが続きましたね。
残るは代謝(M)と排泄(E)のおはなしです。
薬の代謝をする場所は肝臓。
人体最大の分解工場ですね。
薬の「代謝」では分解の意味が強くなることはおはなし済み。
多くの薬は、肝臓で捨てやすい無害な形へと分解されます。
吸収されていきなり分解されたせいで、
薬の効きが悪くなる(目的となる細胞まで届く薬の量が減る)
ことが、初回通過効果。
「吸収」のところで、
初回通過効果を受けない吸収方法を確認しましたよ。
初めて薬が肝臓に届いたときだけでなく、
肝臓を通るたびに薬はどんどん分解されていきます。
薬を分解する酵素はチトクロームP450。
これは1つの酵素を指す言葉ではなく、
たくさんの酵素をまとめて呼ぶ総称だということは、
「分布」の相互作用のところでおはなししましたよ。
個別の酵素について注目したいときに
毎回「チトクロームP450」と書くのは大変なので
「CYP」と略されていることがあります。
「CYP」で「チトクロームP450」と読んでくださいね。
肝臓が薬を分解するのは、
早く腎臓から体の外に捨てる(排泄)ため。
たとえヒト個体レべルで見れば良い効果をもたらすものであっても、
見慣れぬものが入ってきた以上、
早く体の外に出すためです。
だから分解された薬(だったもの)は、
水に溶けやすい形に変わります。
さらに水によくなじむように、
糖が形を変えてできたもの(グルクロン酸など)に
くっつけることもありますよ。
このように薬は分解されたら排泄へと一直線ですが。
中には、分解されてから働く薬もあります。
それが「プロドラッグ」です。
プロドラッグというのは、
吸収しやすい形や悪さをしにくい形に加工した薬。
体の中に入って(吸収されて)、
肝臓で分解(代謝)されてから薬として本来の効果を発揮します。
例えばNSAIDsに含まれる消炎鎮痛剤の一部が
胃に優しい(胃に悪さをしにくい)のは、
プロドラッグの形をしているから。
また、抗生物質の一部はそのままでは吸収されにくいので、
飲み薬として使いたいならば、
吸収されやすいプロドラッグにした方がいいですね。
次回は、排泄(E)のおはなしです。