10 脳神経系のおはなし(2)感染・腫瘍・脱髄性疾患(3)

TORCHのOから、HIVに続き

麻疹ウイルスもおはなししておきましょう。

麻疹にかかった後、

ウイルスが完全に消えずに脳内で持続感染して増殖すると、

数年後に発症する脳炎が

「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」です。

日本では、MRワクチンのおかげで激減しました。

世界では地域によっては

(パプアニューギニアやパキスタン等)

今でも多発しています。

特に、2歳以下で麻疹にかかると危険です。

知能低下と性格変化が起こる第1期。

そこにミオクローヌスと失立発作が加わる第2期。

構語障害や失調、痙縮が起こり寝たきりになる第3期。

四肢麻痺、昏睡に至る第4期を経て、

死に至るまで約6年です。

その時々に応じた全身管理と、

家族も含めたメンタルサポートが必要になってきますね。

 

(3)プリオン

原虫でも真菌でも、細菌でもウイルスでもない

「プリオン」が悪さをすることもあります。

異常になったプリオンタンパクが

脳に蓄積するのが「プリオン病」。

プリオン病の代表が、

クロイツフェルト・ヤコブ病です。

角膜や硬膜といった臓器移植や、

牛海綿状脳症(BSE)からも感染します。

一時期外国からの牛肉輸入が

厳しい規制のもとにおかれた原因です。

異常プリオンタンパクが体内に入り、

増えて脳にたまってくると、

大脳皮質が萎縮し、

組織が海綿(スポンジ)状に変性していきます。

「亜急性海綿状脳症」とも呼ばれるのはこのためです。

感覚障害、運動失調、性格変化、知能低下が生じ、

けいれん、ミオクローヌスや

パーキソニズムも出てきます。

数か月で寝たきりになり、

意思疎通もできない無動性無言を経て、

発症2年内に死に至ります。

状態に応じた、全身看護が必要ですね。

注射・採血の針刺し事故をはじめ、

爪切りや口腔内洗浄時の出血には要注意。

痰の吸引瓶は水洗いだけでなく

水酸化ナトリウム粒を入れて処理することが必要です。

この作業、

水酸化ナトリウム(NaOH)で内容物を強アルカリ性にして、

タンパク質(プリオン)を

変性させていることに気付きましたか?

もちろん、

患者や家族の精神的ケアが必要なことは言うまでもありません。

 

以上が、脳や脊髄をおかしくする病原体のうち

特徴的なもの。

病原体感染の結果に注目したものが、

脳膿瘍と髄膜炎ですね。