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5 タンパク質のおはなし(3)

2022年3月25日

タンパク質の立体構造について分かってきたので、

今回はその例からスタート。

 

タンパク質の4次構造を理解するのに、

ヘモグロビンはとても役に立ちます。

これ、血糖値のところで出てきた名前ですね。

お待たせしました。

「ヘモグロビンA1c」の、

ヘモグロビンについてのおはなしです。

ヘモグロビンは、

3次構造のユニットが4つと、

円盤状のヘムが4個でできています。

3次構造のユニットは

αユニットが2つ、βユニットが2つ

これが酸素とゆるーくくっつき、

全身の細胞に酸素を運ぶために

一番役割を果たせる(機能的な)形なのです。

3次構造の立体構造が集まって、

役目を果たせるようになったのが4次構造。

4次構造と言われたら、

ヘモグロビンの姿を思い出してあげてくださいね。

 

タンパク質は立体構造が大事。

そのことを思い知らせてくれるのが「変性」です。

変性とは、タンパク質の形が変わったせいで

性質が変わってしまったこと。

一番いい例が、卵の白身です。

生の白身は、透明でぷるぷるしていますね。

でも加熱すると…白く不透明に変わってしまいます。

これ、熱によって

タンパク質の立体構造(3次構造)が変わってしまったため。

SS結合が外れてしまったところ、イメージできましたか?

このように、ちょっとしたことでタンパク質の立体構造…

つまりタンパク質の性質は変わってしまいます。

そこをうまく利用したものが「殺菌」や「滅菌」です。

細菌も細胞。

細胞膜にはタンパク質が埋まっています。

タンパク質を変性させてしまえば、

細菌は増えるどころか生きていくこともできません。

 

ただ…敵もさるもの。

細菌の種類によっては

100℃くらいじゃタンパク質を変性させられません。

細胞壁のガードがやたらと硬いものがいるのです。

しぶとい細菌の例として「芽胞を作る菌」があります。

これは何と宇宙空間でも死なないような

耐久形態「芽胞」を作ります。

ちょっとやそっとじゃ太刀打ちできません。

だから、こんな菌を変性させようとしたら、

こちらも最終手段クラスを用いねばなりません。

薬品なら、グルタルアルデヒドです。

これは芽胞菌にも効果のある薬品ですが…

当然、ヒトの皮膚には使えません。

だって、ヒトの皮膚も細胞。

あっという間にタンパク質変性を受けて、

皮膚の細胞がおだぶつになってしまいます。

だから、グルタルアルデヒドは便利ですが、

ヒトには使えません。

 

このようにタンパク質変性を

うまく利用するのが「殺菌」や「滅菌」。

もちろん前提になっている

「細胞膜にはタンパク質が埋まっている」ことや、

「タンパク質は形が変わると働きが変わる」ことを

忘れちゃだめですよ!

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20220326更新)