10 脳神経系のおはなし(3)変性障害と異常の結果(1)
1 神経変性疾患
神経細胞それ自体がおかしくなってしまうのが、
神経変性疾患。
パーキンソン病、アルツハイマー病、
ハンチントン病、脊髄小脳変性症、
筋委縮性側索硬化症、
球脊髄性筋萎縮症等がここに含まれます。
情報がうまく伝わらないだけでなく、
判断・命令のところもおかしくなってしまいます。
それゆえ、今まで以上に症状が広範囲にわたり、
どうしても理解の難易度が上がってしまいます。
特定の場所がおかしくなるなら、そこの働きに注目。
全体的におかしくなる病気については、
「特にどこに症状が出やすいか」を
意識すると分かりやすくなりますよ。
(1)パーキンソン病・アルツハイマー病
A パーキンソン病
パーキンソン病は、中脳黒質から線条体に向かう
ドーパミン作動性神経細胞が変性する病気。
線条体は大脳基底核にある「運動担当」の部分です。
50代から発症し、加齢で増加していく傾向にあります。
大脳基底核にある線条体やその内側に位置する被殻・尾状核、
中脳にある黒質でもドーパミンが減っていってしまいます。
黒質はメラニン色素が多くて黒く見えるので、
「黒質」ですよ。
ドーパミンは、神経伝達物質の1つ。
ドーパミンで情報を伝達する細胞が担当する仕事の多くは
「運動の命令」です。
だからパーキンソン病の四徴は、
「振戦」「無動」「筋強剛」「姿勢反射障害」のように
動きに関係したものになります。
6~7割にでるのが静止時振戦(安静時振戦)。
安静にしているときに手や足が震えるもので、
パーキンソン病に特徴的な振戦です。
やがて他の症状も出て、
5年ほどで嚥下障害、発汗障害、便秘・排尿障害等が出てきます。
無動はすぐに動き出せない「すくみ足」に代表される状態。
筋強剛は、
外から力を加えて屈伸させようとすると抵抗を感じること。
姿勢反射障害は、立っている状態からすこし肩を押すと、
突進したり、倒れてしまったりすることです。
主に「ドーパミンの一歩手前(レボドーパ:L-DOPA)」を
使う薬物療法になりますが、
長期使用で「ジスキネジア」と呼ばれる副作用が出てきます。
ジスキネジア自体は不随意運動を指す言葉です。
薬によって生じるものは「遅発性ジスキネジア」と呼びますね。
パーキンソン病の治療時に出てくる遅発性ジスキネジアは、
痙性の強い(手足が突っ張る)、
四肢や頭部の舞踏様の動きが見られます。
治療を始めて、数年して出てくる症状ですよ。
手術対応なら、DBS治療や高周波凝固などの方法があります。
原則として、進行が止まるものではありません。
うまい付き合い方を
本人・家族と一緒に考えていく必要があります。
どうしても便秘は出てきますので、
必要に応じて浣腸や緩下剤は必要。
水分は取る必要がありますが、
排尿障害のことも考えると夕食後は控えめに。
発汗障害で体温調節がうまくいかなくなっていますから、
こまめな衣服・温度調節も必要ですね。
嚥下障害は誤嚥性肺炎につながりますから、
生活の質に直結すると思ってください。
運動命令がうまくいかないため、転倒しやすい状態です。
ベッド柵やリハビリ靴等、
本人と相談の上使いやすいものを選んでください。
精神のところでも出てくることですが、
加齢と病変だけが全てを左右するものではありません。
環境は、とても大きな要因です。
不眠や過眠、抑うつが疑われるときには、
会話の重要性を思い出してくださいね。
また、全国に患者会がありますので、
積極的に情報を提供してください。
身体機能状態によっては身体障害者手帳の対象ですから、
うまく活用して活動の場を広げてください。