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10 脳神経系のおはなし(1)中枢の基本構造と血管異常(2)

A 脳自体の出血

「脳出血」とは、

頭蓋内の脳実質(大脳・小脳・脳幹等)内での出血のこと。

脳幹というのは、中脳・橋・延髄をまとめた呼び名。

生命維持中枢があり、

脳神経の出発場所である等共通点が多いため、

3か所をまとめて「脳幹」と呼ぶことが多いですね。

さらにどこで出血したかによって呼び名が変わります。

大脳皮質なら「皮質出血」、

大脳基底核(の被殻)なら「被殻出血」、

間脳の視床なら「視床出血」、小脳なら「小脳出血」で、

脳幹で起これば「脳幹出血」です。

出血の起こった場所によって、

出てくる症状は変わります。

特に危険な脳幹出血の大部分を占める橋出血では、

意識障害、昏睡、呼吸不全が起こり、

生命の危険です。

橋は呼吸中枢はじめ、生命維持反射のある所。

そこがおかしくなる意味、

否が応でも分かりますね。

 

これら脳出血の原因は

血管細胞の壊死による血管破壊。

血管細胞壊死は、

飲酒や高血圧で起こりやすくなります。

常に圧力がかかり、

血管の柔軟性が失われて脆弱化していくからですね。

特に高血圧との関係が深いとされているのは、

被殻出血と視床出血。

 

被殻出血では

おかしくなったところ(病巣)と

反対側の感覚・運動障害が出ます。

視床出血では病巣反対側の感覚障害と、

共同偏視が出てきます。

「病巣と対側」に障害が出る理由は、

情報は途中で脊髄をまたいで反対側に伝わるから。

運動の命令も、

(表在・深部どちらの)感覚情報も脊髄をまたぎます。

でも、脊髄をまたぐ場所はちょっとずつ違います。

あとでその違いが出てきますよ。

 

共同偏視は、

一般に「病巣をにらむ」といいます。

「変!」になった方に眼球がどちらも傾く、

という意味ですね。

眼球の運動をコントロールする

各半球の働きを考えれば理解できますよ。

基本的に、右脳は両眼球を左側に、

左脳は両眼球を右側に動かす命令を出します。

もし脳半球の片方が「変!」になってしまっても、

反対側の半球が頑張って

カバーできるような関係になっています。

仮に右側で「変!」になったとき、

頑張る立場にあるのは左脳ですね。

そうすると左脳の情報が優先的に使われるようになります。

結果、左脳からの命令により、

両眼球が右側(「変!」になった方:病巣)を向く

…これが共同偏視です。

 

脳出血が起きてしまっても、

100%が手術になるわけではありません。

脳幹出血は手術対応外ですし、

「手術に耐えられない全身状態」もありますからね。

 

手術になったとき、

開頭手術になるか血腫(血だまり)吸引のみになるかは、

場所と量次第。

水頭症にならないように、

ドレナージも一緒にすると思います。

水頭症については、あとでおはなししますね。

 

小さい(生命に危険を及ぼさない)脳出血は、

再発防止が重要になります。

何はなくとも血圧を下げましょう(降圧)。

そして止血作用を援護(止血剤)。

出てしまった運動麻痺には、リハビリテーションです。

うつ状態に陥ってしまう人もいますから、

メンタルケアも忘れないでくださいね。