2 脈拍・血圧のおはなし(1)心臓2:心筋異常(2)
悲しいことに閉塞して、
心筋が死んで(壊死)しまったものが心筋梗塞です。
狭心症同様、放散痛のある胸痛が30分から数時間続き、
冷や汗や吐き気、嘔吐を伴うこともあります。
高齢者や糖尿病の人は感覚が鈍磨しがちで、
痛みを感じないまま息切れから
呼吸困難、失神につながることもあるので注意です。
発生から数時間以内なら、血栓を溶かし、
カテーテルを入れて広げる
「再灌流療法(PCI)」が効く可能性があります。
間に合ったならば、2~3週間で退院できるかもしれません。
…もちろん、血管破裂や不整脈からの
心原性ショック・心不全を起こしてしまったら生命の危機となります。
「間に合うか否か」が全てですので、
問診と心電図の重要性が高くなります。
看護師でも痛みや心電図の特徴(ST上昇等)は、
理解しておきましょうね。
心臓の役割を十分に果たせない状態が、心不全。
今まで勉強してきたことすべてをひっくるめると
「心不全」になります。
分類方法はいろいろありますが、
最終的には「とにかく心臓が変!」という
明確な区分ができない状態になります。
とはいえ、身体の基本構造を問うには便利なので、
「右心不全」「左心不全」という概念だけは
一通り理解しておきましょう。
イメージしやすいのは左心不全。
全身に酸素の多い血液を送り出すところが
うまく働かなくなったら、どうなりますか?
僧帽弁と大動脈弁のおはなしは、すぐに浮かびますね。
心筋症の話も、ここに当てはまりそうです。
狭心症の発作時や、
心筋梗塞も、最終的にはここのおはなしにつながります。
左心室の機能が低下すると、
肺周りの血液が多すぎる「肺うっ血」になります。
本来低いはずの肺循環の血圧が上がってきてしまう
肺高血圧症も起こってきます。
肺は、周りにいっぱい血液がたまっていると、
膨らみにくくて窮屈ですね。
だからちょっとでも下の方に血液が行ってくれる姿勢だと、
呼吸が楽になります(起坐呼吸)。
血液がたまっているため、
肺胞や気管の中にまで水分が移動し始めます。
水分が多すぎる血管内から、比較的水分の少ないほうへと
「ぎゅうぎゅうすかすか」による移動です。
気管内の液体水分は「異物」ですから、咳で追い出しますね(咳嗽)。
聴診器を当てると、肺雑音として湿り気のある水泡の音
(ブク・ブク、ゴボ・ゴボ)が聞こえますよ。
肺胞の毛細血管が血液のたまった圧力に耐えきれず、
破れてしまうと出血します。
毛細血管からの出血は微量なので、
水分たくさんの痰と一緒に体外に出すと
赤ではなくピンク色になります(ピンク色泡沫喀痰)。
じゃあ、右心不全は?
今度は肺にうまく血液を送れない状態ですね。
三尖弁と肺動脈弁のおはなしでした。
あとは血管系のところでおはなしする「肺塞栓症」がここにあたります。
「肺の血管で詰まった!そこから先に進まない!渋滞発生!」ですね。
心臓の入り口には弁がありませんから、
どんどん大静脈が渋滞していきます。
静脈系には勢いがありませんので…
体の下の方が大渋滞を起こしてむくんできます(下腿浮腫)。
また、肺に行って酸素を受け取る血液が減ったせいで、
常に呼吸困難状態になってきますね。
このように。
「左心不全」「右心不全」のおはなしは、
今までの心臓のおはなしの復習です。
ここまで復習できたら、不整脈のおはなしに入りましょう。
不整脈も、最終的には心不全につながります。
注目点が「心臓の電気(心臓収縮命令)」になることに、
注意してくださいね。