2 脈拍・血圧のおはなし(1)心臓3:心電図異常(1)
4 心電図の異常
心電図の基本については、解剖生理学で勉強しましたね。
「正常な波の形が分かる」のが出発点です。
その波の形ができるためには、
刺激伝導系の命令通りに心筋が収縮することが必要。
さらに心筋が収縮するためには、
血液中のミネラルが正常に保たれている必要もあります。
ぜひ解剖生理学教科書の該当部を広げながら、
異常心電図とおかしくなった場所を確認してみてください。
心停止は、心電図の波がなく、真っ平。
生命最大の危機か、生命終了後のどちらかです。
心室細動(Vf)は、心室がプルプル小刻みに動いているだけで、
血液を送り出せていない状態です。
すぐに心停止につながる可能性が高い、
すごく危険なAED対応の心電図。
多くは今まで勉強してきた心疾患を前提に起こります。
でも前触れなく起きる
「特発性心室細動(ブルガダ症候群)」もあることに注意です。
心疾患持ちの患者さんがいたら、
「心室細動が起きるかもしれない…」の意識をお忘れなく。
心室頻拍(VT)は、
早い脈(120~250回/分)が3連発以上みられるもの。
頻拍中は心室中に血液がたまる前に心室が収縮していますから、
十分な血液を送り出せていません。
そのせいで動悸・息切れから、
血圧低下による悪心・失神・ショックを起こす可能性もあります。
心室細動につながることもある、これまた危険な脈ですね。
対処はAEDや抗不整脈の静脈注射になります。
こちらも
「原則心疾患前提、例外として特発性」があることを覚えておきましょう。
同じく頻脈が起こるものが上室性頻拍。
上室性頻拍の原因は「心室より上」。
…心房か、洞房結節か、房室結節ですね。
本来ないはずの近道(副伝導路)があるせいで、
1回の刺激発生から2回心室が収縮してしまいます。
心電図を見ると、
QRSの前に変な角度の付いた波(デルタ波)が出ています。
これが「WPW症候群の、ケント束(近道)による、デルタ波」です。
1分間当たり100~260回をならして、
平均180回/分くらいの頻脈になります。
心室の「動き」だけをみれば正常ですが…
急に動悸・息切れ・めまい等を起こして、急に治まります。
一応、副交感神経系刺激で洞房結節の伝導を抑制すれば、
頻脈が止まることがあります。
具体的には「まぶたの上からのやさしい眼球圧迫」、
「冷たい水を顔にかける」、
「口を閉じたまま息を吐く動きをして胸腔内圧を高める
(バルサルバ手法)」などですね。
ただ、近道自体がなくなるわけではありませんから、
やはり根本的解決には手術になってしまいます。