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3 脈拍・血圧のおはなし(2):血管(動脈硬化)

2 血管の異常

いきなりですが、

「動脈硬化がなぜ起こるのか」のメカニズムは研究中です。

「これらは関係性が高いのではないか」と

いうものは分かってきていますので、

その範囲で理解すれば十分ですよ。

 

血管の基本構造は外膜、中膜(平滑筋)、内膜の3層構造。

動脈は内膜が分厚く、静脈には逆流防止の弁。

毛細血管は血管壁細胞が1層だけのところもありましたね。

 

(1)動脈硬化

動脈硬化の始まりは、内膜の一番内側(内皮細胞)が

何らかのきっかけで変になる機能障害です。

「内皮細胞が変!」というサインは、

白血球の仲間のTリンパ球や単球(血管内マクロファージ)に伝わります。

サインを受け取った白血球たちは内皮細胞を抜け、

中膜(平滑筋)内へ。

そこでマクロファージは周りの脂質を貪食して、泡沫細胞化します。

すると「もっと貪食しないといけないものがあるぞ!」というサインが出て、

さらに白血球たちが集まり…どんどん泡沫細胞化して…。

この繰り返しで出来たものが粥腫(アテローム)や粥腫斑(プラーク)。

さらに大きくなると血液が通る部分(内腔)が狭くなり…。

無理にでも通ろうとした血液の勢いで

粥腫等が破れて血栓や塞栓が生じたり、

血液が通れなくなって梗塞が起こったりするのです。

 

恐怖の動脈硬化の始まりは、

血管内皮細胞の機能障害でした。

その原因は多岐にわたります。

ウイルスや細菌等による毒、酸化LDL、

ホモシステインや機械的刺激も内皮細胞の機能障害につながります。

ホモシステインというのは、必須アミノ酸メチオニンの中間代謝物。

早く対処しないと危険なので、すぐに発見したい。

新生児スクリーニングの対象の1つです。

 

注意してほしいのは「酸化LDL」。

ただの「LDL」ではありませんね。

末梢にコレステロールを運ぶLDLは、何も悪いことをしませんよ。

少し何かの悪影響を受けて「酸化LDL」になってしまうと、

周りの血管内皮細胞を傷つけてしまう存在になってしまいます。

「何かの悪影響」とは、体内で普通に起こっている反応「酸化」です。

「運動」はLDLを酸化から防いでくれますので、

「動脈硬化予防には運動がいい」といわれるのですね。

 

動脈硬化が起こるところは、太い血管だけではありません。

末梢動脈硬化症(ASO)が、近年増加中です。

四肢の動脈が硬化したせいで、

うまく血液が流れずに虚血が起こります。

そのせいで細胞はATPを思うように作れず

『冷感やしびれ』が出ます。

進行すると

「少し歩いただけで歩けない…でも、少し休めばまた歩ける」という

『間欠性跛行』が出てきます。

もっと進行すると『安静時にも』症状が出て、

最終的には

酸素も栄養も届かなくなった細胞が『壊死』してしまいます。

『』で強調したところが、

末梢動脈硬化症のフォンテイン分類にあたりますよ。

 

根本的な解決策としては、バルーンカテーテルやステント留置、

バイパス手術や血管新生手術をすることになります。

でも、早いうちならそんな痛い思いをせずとも進行を抑えられます。

血管拡張薬等の力を借りながら、「運動」がよく効きます。

「運動」といっても、激しすぎる運動は逆効果。

脈拍数100~120回/分くらいのウォーキングを

週に150分(1日約22分)が目安です。

もちろん、下肢冷感・しびれに対する保温と保護はお忘れなく!