3 脈拍・血圧のおはなし(2):血管(奇脈)
3 奇脈
心臓の動きと血管にかかる圧力の関係は、
解剖生理学で勉強しましたね。
左心室が収縮して大動脈に勢いよく血液が流れ込むと、
収縮期血圧(最大血圧)。
左心室が元の大きさに戻って(拡張)、
左心房が左心室に血液を送り込むと、拡張期血圧(最小血圧)です。
「奇脈」というのは、
息を吸ったときに血圧(収縮期血圧)が10mmHg以上下がること。
心臓と、その周りの構造が分かればちゃんと理解できますよ。
心臓の周りには漿液と心外膜がありました。
さらにその外側には、太い血管や肺、気管がありました。
もっと外側は…胸郭と呼ばれる一定の大きさの閉鎖空間になります。
気管と食道、神経や太い血管等の出入り口は筋肉で覆われ、
内側が陰圧になるように保たれています。
これ、呼吸に必要な大事なこと。
筋肉の動きで胸郭の大きさを変えることで、
内側の空間の圧力を変えて息を吐き、息を吸うのです。
そのためには筋肉の動きが胸郭の大きさ変化に直結する必要がありますね。
心臓周りに余分なスペースなどない…とイメージできるはずです。
ここで息を吸うと、肺胞が膨らみ、肺の占める空間が広がります。
血管や心臓は、ぎゅーっと押しつぶされます。
その結果、心房に戻ってくる血液が減ってしまいますね。
すると左心室から全身に押し出せる血液量も減りますから、
血圧が下がることになるのです。
これ自体は、ごく自然な現象(生理現象)です。
でも、この低下量が10mmHg以上になると異常のサイン。
「心臓の周りに水分や空気等があるせいで、
必要以上に吸気時に心臓が圧迫されている」かも…。
これが「奇脈」です。
水分が多い例は心タンポナーデ。
空気が多い例は気胸、喘息、慢性閉塞性肺疾患など。
空気が多い例については、「呼吸」のところでおはなししますね。
脈拍測定中に
「息を吸っているときに脈が消えた?脈が飛んだ?」と思ったら、
奇脈の存在を思い出してください。