6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(10)
自己免疫疾患の
多発性筋炎・皮膚筋炎は筋肉が「変!」になるもの。
亜急性に、四肢骨格筋の筋力低下が起こります。
筋組織内の炎症で、筋線維が破壊されることが原因です。
自己免疫疾患では
あまりおはなしできなかったのが重症筋無力症。
神経と筋肉の接合部にある
アセチルコリン受容体に対する自己免疫ができてしまい、
そこの電気(刺激:筋収縮命令)が
障害されてしまうものです。
主に外眼筋と眼輪筋がおかしくなります。
「車の運転中に(複視が起こって)
センターラインが2本見える」のが外眼筋障害。
「洗髪時に(まぶたを全部閉じられずに)
目にしみる…」のは眼輪筋障害のせいです。
他にも構音障害、嚥下障害、四肢脱力が起こってきます。
急性増悪(クリーゼ)を起こしてしまうと、
嚥下困難や呼吸困難が出ることも。
目の周囲のみの障害なら、自然寛解の可能性もあります。
薬を使うなら、副腎皮質ステロイド等が使われますね。
クリーゼはじめ重症化してしまったなら、
血漿交換や
免疫グロブリン大量療法が必要になってきます。
増悪因子としては感染やストレスをはじめ、
月経・妊娠(と分娩)も含まれます。
女性では特に十分な注意と管理が必要ですね。
自己免疫疾患全般の注意事項等については、
体温1(過敏症と自己免疫疾患)を見直しておいてください。
同じく骨格筋がおかしくなっていくものが筋ジストロフィー。
何らかの遺伝子異常により骨格筋細胞が変性し、
壊死と再生を繰り返しながら
筋組織が徐々に崩壊していく病気です。
多くの型がありますが、
デュシェンヌ型筋ジストロフィーを覚えておいてください。
X染色体上にあるジストロフィン遺伝子が
おかしくなってしまった、伴性劣性遺伝。
この遺伝子は細胞膜を安定させる働きがあり、
おかしくなってしまうと
筋収縮のたびに細胞膜がダメージを受け、
やがて細胞膜破壊から壊死へとつながっていきます。
2/3は保因者である母親からの遺伝ですが、
1/3は突然生じた遺伝子の異常。
だいたい新生児男子の
4000~5000人に1人発症するとされています。
歩けるくらいまで成長した後、「転びやすい」
「走れない」「階段を上がれない」等で発見されます。
10歳くらいで車いす生活になると、
膝や股関節から拘縮が始まってしまいます。
呼吸筋にも影響が出る20歳前後で
夭折(ようせつ)…が多かったのですが、
人工呼吸器等の医療が発達し、
30歳前後まで生存可能になってきました。
根本的治療は見つかっていないため、
適切な装具を用い、
可動範囲内で適切な運動を行うことが
生活の質及び日常生活動作維持の側面からも有用です。
歩行可能期間が少しでも長くなるように、
副腎皮質ステロイドを用いることもありますね。
遺伝的側面に加え予後の側面からも、
本人や家族に十分なケアが必要になってきます。