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7 体温のおはなし(4)内分泌系(全般)(1)

【イントロダクション:今月と来月分】

体温に関係する3ブロック目。

内分泌系のおはなしスタートです。

内分泌系(ホルモン)は、

細胞がATPを作る「代謝」をコントロールしています。

細胞が血液中を流れるグルコースを取り込めるのも、

血液中を流れるグルコースがほぼ一定の濃度に保てるのも、

ホルモンが働いているおかげです。

私たちの体内環境をほぼ一定に保つことが、

「恒常性(ホメオスタシス)」。

体温維持も、血糖値(血液中グルコース濃度)維持も、

恒常性のおかげですね。

対象となる内分泌器官やホルモンはたくさんあります。

基本的に、上から下へとおはなししていきますよ。

 

1、視床下部と下垂体の異常

頭の中央少し上にあるのが視床下部。

間脳のある場所が視床下部のいるところですが…

イメージ、できますか?

眉間に指をあて、

そこから頭のど真ん中に向かって

イメージで線を引いてみてください。

中心に届く少し前、

ちょっと上の辺りにあるのが視床下部です。

視床下部のすぐ下に下垂体がいますから、

そちらは「中心に届く前の、ちょっと下」。

視床下部は、ホルモンの総元締めにあたります。

個別の内分泌器官に命令を出していたのでは、

忙しすぎて目が回ってしまいます。

だから、主に下垂体を通して指揮・命令をしています。

消化器系全体に抑制効果のある

ソマトスタチン(SS)を除いては、

視床下部から出るホルモンは

下垂体をコントロールするホルモンです。

 

(1)視床下部

そんな視床下部がおかしくなると、

下垂体にすぐ影響が出ます。

例えば、視床下部性下垂体機能低下症。

視床下部の腫瘍や炎症、頭部外傷や放射線治療、

視床下部と下垂体をつなぐ

血管や神経の損傷等が原因です。

下垂体の機能が一部低下することも、

全部低下することもあります。

 

成長ホルモン(GH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌低下は、

個々のホルモンの働きさえ分かっていれば簡単。

視床下部の

生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が減ると、

卵胞刺激ホルモン(FSH)と

黄体形成ホルモン(LH)が分泌不足になります。

同じく視床下部のプロラクチン抑制因子(PIF)が減ると、

プロラクチン分泌量が増えて

産後の女性のように無月経・乳汁分泌が出ることも。

このような下垂体の分泌異常は「視床下部症候群」と呼ばれます。

先程確認した視床下部の位置は

視神経(第2脳神経)の視交叉の上です。

だから原因が視床下部腫瘍のとき、

重症だと視野・視力障害が出ることがあります。

視床下部には空腹中枢・満腹中枢もあるせいで、

食欲異常が出ることもありますよ。

 

腫瘍なら、取り除ければ一番ですが…

難しいこともあります。

そんなときには化学療法や放射線治療をしつつ、

分泌低下にはホルモン療法で対処することになります。

化学療法では骨髄抑制(血球減少)や

消化器症状、脱毛、不妊の可能性がありますね。

放射線治療では頭痛・耳痛・めまいに加え、

思春期前の患者さんでは

知能・発育障害が出うることも忘れないでくださいね。