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7 体温のおはなし(4)内分泌系(全般)(2)

((1):視床下部の続き)

逆に視床下部の働きが過剰になるのが中枢性思春期早発症。

女児に多く、腫瘍が主な原因です。

小学2年生くらい(7歳半)で乳房発達が始まり、

骨の成長点である骨端線が早く閉じてしまうので

低身長になりやすくなります。

本人の心理的動揺を受け止めることが必要ですね。

腫瘍は取り除くことも、

取り除かずに注射等でホルモン分泌量を

コントロールすることもありますよ。

 

(2)下垂体

次に下垂体。

場所は視床下部のすぐ下で、

血管でも神経でもつながっているところです。

総元締めの下の、大元締めですね。

視床下部がおかしくなると悪影響を受けてしまうことは、

先程確認しました。

下垂体機能低下が起こったときには、

原則として下垂体ホルモンの補充療法をしていくことになります。

経口剤のときには、飲み忘れと飲みすぎに注意ですね。

 

個別のホルモンの分泌不足について補足。

 

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)不足に対して

補充療法を取るときには、「副腎クリーゼ」に要注意です。

急性副腎不全のことで、循環不全を起こします。

あとで副腎のところについたら、もう一度おはなししますね。

 

抗利尿ホルモン(バソプレシン、バソプレッシン)は

「出すぎ!」「足りない!」のどちらも問題です。

抗利尿ホルモンの働きは、

「利尿(尿を出すこと)に抗(あらが)う」なので、

原尿からの水分吸収を促進して尿量を減らす働きがあります。

抗利尿ホルモンの不足・作用障害が「尿崩症」。

約6割は外傷や腫瘍によるもので、

残りは原因不明の特発性です。

三大症状は3リットル以上の多尿、口渇、多飲。

原因が分かれば、その治療が尿崩症の治療です。

原因不明なら、水とミネラルに注意しつつ、

抗利尿ホルモンに似た薬を使っていくことになります。

1~2時間ごとにトイレに駆け込むことが多く、

精神的に不安定になる人もいます。

水中毒に注意しつつ、精神面のフォローもお忘れなく。

 

水中毒というのは、

水分の過剰摂取で低ナトリウム血症、けいれんを起こして

生命に危険を及ぼし得るもの。

名前の響きよりもはるかに危険な中毒状態ですからね。

抗利尿ホルモンの出すぎが

「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)」。

イメージしやすいのは腫瘍性の出すぎと視床下部の異常。

血圧調節の受容器がある肺疾患でも起こりますよ。

こちらは体内の水分多すぎ状態(過剰貯留状態)。

薄くなりすぎた血中ナトリウム

(低ナトリウム血症)で見つかることも多いですね。

放置すると脳までむくんで(脳浮腫)、

意識障害等の中枢神経症状が出ます。

もう、悪化すると致命的状況が起こることは分かりますね。

だから体重測定をして、ちゃんと水分を制限していきましょう。

どうしてものどが渇いてダメだ…というときには、

氷片を口に含んで、経過を見ることが必要になります。