7 体温のおはなし(4)内分泌系(全般)(8)
(腎臓の復習とアシドーシス・アルカローシスの基本)
腎臓の働きを簡単に復習しておきましょう。
腎臓は尿を作ることが主な働きですが、
それ以外にも大事な働きをしています。
「赤血球成熟因子エリスロポエチン産生」、
「ビタミンDの活性化」、「血液pH調節」、
「血中ミネラル濃度調節」、
「体内水分量調節(≒血圧調節)」、「尿の作成」です。
後ろ4つ(3つの「~調節」と尿作成)は、
深く関係し合っています。
そこを理解するために、
血液から尿ができるまでをおさらいしましょう。
キーワードは「ろ過」「再吸収」「分泌」です。
腎臓には腹部大動脈からの直行便、
腎動脈が流れ込んでいました。
それが毛細血管へと枝分かれし、
球状に丸まった部分が糸球体。
1層の毛細血管壁細胞には、
隣の細胞との間に隙間があり、
「ざる」のように血液中の水分はじめ
「小さなもの」をこしとることができます。
これが「ろ過」。
血球や脂質、タンパク質のように
大きなものは血管内に残ったまま。
そのまま腎静脈へと戻っていきます。
糸球体の「ざる」の目を抜けて、
周りのボーマン嚢(ボウルのような受け止めるところ)に
たまったものが「原尿」です。
原尿には体の外に捨てたいもののほか、
大量の水、アミノ酸、グルコースや各種ミネラル等の
「まだ捨てたくないもの」が溶けています。
だから、ボーマン嚢からつながっている長い管
(近位・遠位尿細管、ヘンレループ)を通しながら、
「再吸収」する必要があるのです。
水分とナトリウム再吸収担当が、
主に近位尿細管に働く下垂体後葉ホルモンのバソプレッシン。
ミネラルのナトリウムイオンは水と仲が良く、
水と一緒に尿細管の周りにある
毛細血管(体内)へと再吸収されていきます。
ミネラル全般の再吸収と分泌担当は、
主に遠位尿細管に働く
副腎皮質ホルモンの鉱質コルチコイド(アルドステロン)。
アルドステロンは血圧を上げる呪文
「レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系」の一部。
アンギオテンシンⅡの命令を受けて、
アルドステロンは原尿中からナトリウムイオンを再吸収し、
カリウムイオンを原尿中に「分泌」します。
ナトリウムイオンの再吸収は、
仲の良い水も一緒に再吸収されますから、
体内水分量が増え、
血圧上昇につながることはイメージできますね。
でも、それだけでは
体の中がナトリウムイオン(Na+)のせいで
プラスに傾いてしまいますから、
同じプラスのカリウムイオン(K+)を原尿中に分泌します。
こうすれば体の中のプラスマイナスは維持できますし、
血液中に多すぎるとテント状T波を引き起こす
カリウムイオンを体の外に捨てられます。
さらに尿細管は水素イオン(H+)や
重炭酸イオン(HCO₃-)の再吸収調節もできます。
水素イオンは水(血液)に溶けて酸性、
重炭酸イオンは水(血液)に溶けて
アルカリ性を示すと思ってください。
血液の正常域は、pH7.40±0.05で、
そこから酸性に傾くとアシドーシス、
アルカリ性に傾くとアルカローシスでしたね。
極端に正常域から外れると、ヒト(細胞)は死んでしまうため、
pHの恒常性を守る必要があります。