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9 呼吸器系のおはなし(1)通り道と赤血球(9)

原則として、

鉄欠乏性貧血は食事療法と鉄剤で回復します。

食事はできるだけ

動物性タンパク質から鉄分を取るように。

植物中の鉄分より吸収効率がいいことを

説明してあげてくださいね。

鉄剤は便が黒くなり、

ときに悪心・下痢・便秘が出ます。

悪心は鉄剤の種類を変えると

改善する可能性がありますから、

その旨を早めに情報提供してください。

食事と鉄剤で症状が回復しないときには、

薬の飲み忘れがないか確認してください。

あとは出血持続の可能性があることもお忘れなく。

注射は過剰症を起こして

組織障害を起こす危険がありますから、

よほどの緊急時以外には使われないはずです。

 

なお、「二次性貧血」というものもあります。

単に「他の病気のせいで出た貧血」という

意味だけではありません。

体の中に鉄はあるのに、

使い方や配分を間違えて

赤血球産生へと鉄がまわっていない状態です。

だから貯蔵鉄の量を示す「血清フェリチン」を見ると、

正常値もしくは高い値を示しています。

貯蔵鉄を使い果たした後に起こる

貧血の鉄欠乏性貧血では、

血清フェリチンは低下していますよ。

 

原因となりうるのは、

慢性炎症や腫瘍、自己免疫疾患。

腎臓が悪いせいでエリスロポエチンが作れない

腎性貧血もここに入ります。

原因になっている病気の治療が、

二次性貧血の一番の治療。

特に自己免疫疾患の貧血に効くのは、

鉄剤ではなく

副腎皮質ステロイドであることは覚えておいてくださいね。

 

B 巨赤芽球性貧血

特殊型のスタートは、巨赤芽球性貧血です。

これはDNA合成障害による貧血。

欠けているものは

葉酸やビタミンB12、合成に使う酵素です。

DNAの合成は害されても、

RNAやタンパク質の合成は邪魔されていないため、

「赤血球になりたいもの(赤芽球・巨赤芽球)」は

どんどん大きくなっていきます。

でもDNAを作れないと

赤血球になるために必要な細胞分裂ができません。

赤血球になれないから酸素は運べない、

細胞分裂できずに体は大きいまま…。

だから巨赤芽球性貧血は、大球性貧血です。

 

ビタミンB12欠乏はベジタリアン等の摂食障害の他に、

胃切除等による内因子欠乏が原因。

ビタミンB12の吸収には胃で出る内因子が必要でした。

あと、慢性アルコール中毒(アルコール依存症)等でも、

食事の不摂取からビタミンB12欠乏が起こります。

 

葉酸欠乏は主に偏食による摂取不足。

妊娠中は必要量の増加に追い付けないと、

そのまま欠乏になってしまいます。

経口避妊薬(ピル)や抗けいれん薬等による

吸収障害で生じることもあります。

貧血症状(動悸、息切れ、めまい、頭痛、全身倦怠感等)の他に、

舌の発赤・疼痛(ハンター舌炎)が起こることもあります。

これは、舌の粘膜にいる

味蕾の生まれ変わりの早さを思いだせれば分かるはず。

こちらも細胞がうまく生まれ変われずに困っている状態です。

 

欠けているものにより、メインになる治療方法が変わります。

葉酸欠乏なら、経口食事療法。

名前の通り、野菜(葉っぱ)に多く含まれますね。

ビタミンB12欠乏なら、筋肉注射による補充療法。

ビタミンB12欠乏で、脊髄の変性症も起こりえます。

それについては中枢のところにいったら、

おはなししますね。