10 各論5:体温(感染・免疫):⑤ウイルスに効く薬(1)
今までは微「生物」に効く薬のおはなしでした。
いよいよ「生物?」に効く薬のおはなしです。
ウイルスは、それだけでは増えることができません。
生物(細胞)の中に入りこんで、
そこにあるものを利用して自分を増やしていきます。
そんなウイルスに効く薬の一例が
逆転写酵素を邪魔するジドブジン(レトロビル)。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00052969
セントラルドグマを思い出してください。
ヒトの細胞は複製・転写・翻訳。
「逆転写」なんて言葉はありませんね。
逆転写は、
ウイルスだけにあるRNAからDNAを作る仕組みのこと。
これを使ってウイルスの情報を侵入した
(感染した)細胞のDNAに組み込み、
ウイルスを作らせる(増殖)させるのです。
ジドブジンは逆転写を邪魔して、
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)増殖を防ぎます。
禁忌は好中球が減少している人と、
イブプロフェンを使用している人。
ジドブジンの骨髄抑制作用によって、
血球全体が作られにくくなってしまいます。
それをもともと好中球の少ない人に使ってしまったら…
異物から身体を十分に守ることができません。
イブプロフェンは血友病の患者さんで、
出血傾向が強く出ることがあるからですね。
骨髄抑制ということで、赤血球の産生も減りがちです。
ビタミンB12欠乏では貧血が出やすくなりますので、
ジドブジンの慎重投与対象に入っていますね。
また、ジドブジンは胎盤を抜けて乳汁にも移行します。
授乳は禁止。
妊娠・妊娠可能性のある人に対しては、
「治療有益性が危険性を上回るときのみ」。
つまり「やむを得ないとき」ですね。
使用後の出生児には、
ジドブジン由来の貧血が出る可能性がありますよ。
また、DNA合成を邪魔する薬も
ウイルスの増殖に効く薬になります。
ウイルスのDNA合成酵素(ポリメラーゼ)を邪魔する薬として、
アシクロビルを紹介しますね。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00060058
アシクロビルは単純ヘルペスウイルスと
サイトメガロウイルス(水痘・帯状疱疹の原因)に効きます。
TORCHの「CとH」に効く薬ですね。
禁忌は本剤とバラシクロビル塩酸塩に対する過敏症。
バラシクロビル塩酸塩も、
単純ヘルペスウイルスと
サイトメガロウイルスに効く薬です。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00062579
併用注意等も似ているので、
プロベネシドとテオフィリンに注意しておいてくださいね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20230503更新)