2 「健康」とは:(3)「ヒトとして生きる」ために(2)
家制度がなくなり、
生と死、病気療養の場所は病院に移りました。
社会性を身につける場所も家族(や近所)から、
幼稚園へと移りつつありましたね。
「家族」の役割変化は、さらに進みます。
現在、単身世帯(おひとりさま)が増加中です。
夫婦と子をイメージしていた「家族(世帯)」の中で、
「本人のみ」の占める割合が増えてきたのです。
現在の厚生労働省は、
「世帯は住居及び生計を共にするものの集まり
又は
独立して住居を維持し、もしくは独立して生計を営む単身者」としていますね。
この単身世帯にはいろいろな状態が含まれます。
進学や就職に伴う1人暮らしは単身世帯。
結婚後に子と配偶者(結婚相手)に先立たれても単身世帯。
自らの希望か不可抗力か、若者か高齢者か。
一言でまとめることはできません。
だから何らかの医療的介入を考えたときに、
一筋縄ではすぐに行き詰ってしまうことが考えられます。
単身世帯には、本人しかいません。
病気になっても種々の理由で「病院にかかれない人」が出てきたのです。
仕事が忙しい、有給が取れない、そもそも医療費がない。
このままでは救えたはずの命すら落としてしまうことが
今後増加してくると考えられます。
体の問題だけでなく、心の問題でも同じこと。
一般に病気療養の前提となる「受診(受療)行動」が、
本人の意思と違う要因によって妨げられつつあるのですね。
また「出産はトイレや風呂場」、
「死ぬ場所は自宅で看取られることなく孤独死」など、
病院に移転したはずの「生と死」すらも怪しくなっています。
さらに結婚後も仕事を続ける(すぐに仕事に復帰する)女性が増加。
それが金銭的な必要性であろうとなかろうと、
「結婚で退職、専業主婦」が主だった時と比べて母子の時間は確実に減りました。
母性看護で学ぶ愛着(アタッチメント)をはじめとする
心理的親子関係構築時間が失われつつあるのです。
また、少子化が一段と進み「一人っ子」は珍しい存在ではなくなりました。
自己と他者を区別し、他者と触れ合う場所が、
いきなり保育園等の集団施設になりうる…。
「社会性」を学ぶ最初の場所が「家族」から消えつつあるのです。
ここには
「複数の子を希望するけど、
金銭的理由に代表される各種の問題があって2人目を産めない」
現実も反映されています。
生殖に関係する性行動が「社会」の影響を受ける意味、
今ならイメージしやすいですね。