2 「健康」とは:(1)「生きる」ために(9)[補足12]
本分中に出てこなかった用語(のうち大事なもの)を補足しておきますね。
「平均余命」というのは、
ある年齢ちょうどになった人があと何年生きるかの期待値です。
とくに0歳の平均余命を「平均寿命」といいますね。
だから「平成30年の平均寿命は男性81歳、女性87歳」と言われたら、
「平成30年に生まれた人は、
男性は81年、女性は87年生きると期待されるよ」という意味です。
期待するだけなので、
「その人がその年まで生きる」保障ではありませんからね。
「有訴者」というのは、病気やけが等で自覚症状がある人のこと。
男女で自覚症状の傾向が異なります。
男性では腰痛が最も多く、肩こり、せき・痰と続きます。
女性は肩こりが最も多く、腰痛、手足の関節の痛みと続いていきます。
男性の方が肉体労働による負荷が大きいようです。
また、喫煙率が女性より高いことが(せき・痰に)反映されていますね。
平成30年の20歳以上で、
男性喫煙率は27.8%、女性喫煙率は8.7%です。
せき・痰は一般的な呼吸器系感染症だけでなく、
肺がんの症状の1つであることも思い出してくださいね。
女性の肩こりには、デスクワーク等による負荷に加えて、
乳房の重量による負荷も関係ありそうですね。
あと「腰痛」や「手足の関節の痛み」には、
閉経後の骨粗鬆症による圧迫骨折や、
関節リウマチによる関節変形が含まれている可能性がありますよ。
これらの好発条件(いつ、どこに、誰に起こりやすいのか)については、
病態学でちゃんと勉強してください。
自覚症状は、受療行動につがります。
外来受療者数は、近年横ばいの状態ですね。
自覚症状があったから病院に…という人が多いのは当然ですが。
がんや内分泌系疾患(各種代謝異常等)は、
ほぼ半数が「自覚症状のない受診」です。
じゃあ、なぜ医療機関にかかったのか。
健診等で「ひっかかった(受診を勧められた)」からですね。
まさに、「健康診断による早期発見」が役立っているところです。
ちょっとだけ寄り道。
国民衛生の動向には
「健診等をなぜ受けなかったのですか」という質問に対する
回答の多かったものが載っています。
多い順に「いつでも受けられるから」、「時間がない」、
「めんどう」、「費用がかかる」…です。
「いつでも受けられる」ということは、
「今、調子が悪いから何とかしたい」というきっかけがない、ということ。
「時間がない」、「めんどう」は、職場等で(半ば強制的に受ける)
健康診断を受ける機会がない、ということの表れですね。
費用については、職場での健康診断は会社負担ですし、
家族にも健診のお知らせが届くはず。
少なくとも40歳を過ぎると、市町村や特別区から
「健診のお知らせ」が広報等を含めて届くはずです。
市町村と特別区は、そこに住む住民の健康に対して
最初に責任を負う立場にありますから、
「お金負担するから、ちゃんと健診受けて!健康でいて頂戴!」と
働きかけてくれるのです。
他の理由があって定期的に病院で検査を受けていれば話は別ですが…
健診のお知らせが届いたときには、
そのとき自覚症状がなくともできるだけ健診を活用してみてください。
特に将来の死亡に関係の深いがんは、
早期には自覚症状がないことが多いですからね!